魔法先生……? ネギ魔!
 
 
書いた人:U16
 
第21話
 
 フェイトの奇襲によって、右肩に致命傷となる一撃を受けたネギ。
 
「ネギぃ──!?」
 
「ネギ先生!!」
 
 生徒達の絶叫が響く中ネギの表情が驚愕に染まり、そのまま頽れる寸前、彼の口元が邪悪に歪む。
 
「まったく、人使いの荒いマスターダゼ」
 
「私達、人間じゃありませんけどね」
 
「…………」
 
 そう告げ、ネギの身体が液体となって滴り落ち、その身を三体の少女へと変質させる。
 
「スライム!?」
 
「いよぅ、久しぶりだな」
 
 気軽に挨拶するすらむぃ。
 
 自分の攻撃したネギが偽物だと知ったフェイトは、すぐに気を取り直すと本物のネギの居場所を探ろうとし、周囲を見渡した瞬間、彼の背後から聞き覚えのある声がした。
 
「会いたかったぜ、白髪野郎!」
 
 ──解放!
 
「“精霊の御手”!!」
 
 青い輝きを放つ右手でフェイトの顔を殴りつけた。
 
「グッ!?」
 
 展開している防御障壁を全て突破され、力ずくで殴り飛ばされたフェイトはそのまま空中で身を捻って体勢を立て直すと華麗に着地し、
 
「……驚いた。まさか本当に刺客を手懐けていたなんて」
 
 まるでダメージを感じさせない動きで戦闘の構えをとるフェイト。
 
 対するネギは表面上は余裕の笑みを浮かべつつも、先程の一撃で仕留められなかった事に内心で舌打ちする。
 
 ……ちっ、予想以上に頑丈な野郎だな。
 
 ネギも影から違法とは知りつつも武器を手放すような真似はせず、独自に携帯していた愛杖を召喚し、油断なく構える。
 
「お、おい! 君たち、この場での戦闘は……」
 
 割って入ろうとした警備員が、フェイトの仲間が放った雷撃によって行動不能に追い込まれる。
 
 勿論その雷は、ネギや彼の仲間達の元にまで及んでいたが、それらは全て防御された。
 
 雷が止むのも待たず、ネギの仲間達が一斉に反撃に移る。
 
 まず飛び出したのが、小太郎、楓、アーニャの高速戦闘を得意とする三人だ。
 
 ともあれ、三人共何も武器を持っていない。
 
 アーニャの魔法発動体も、予備の指輪のみ。
 
 対する敵は、ネギと対峙しているフェイトを除けば二刀を携えた剣士と大柄な魔導士。そして、小柄な魔導士の三人。
 
 三対三の対決。勿論、これで勝負がつけば言うことはないが、彼らの役割はあくまでも不明な敵戦力の把握と足止め。
 
 本命は続く明日菜、茶々丸、ネカネ、ヘルマン、古菲といったパワー重視型の戦士達だ。
 
 彼らが戦闘に参戦し、あちこちで建物にも被害が出始める中、フェイトとネギも戦闘を開始していた。
 
「京都での借りをまとめて返させてもらうぜ!」
 
「君には無理だと思うけど?」
 
 相変わらず無表情で告げるフェイトに対し、ネギが詠唱を開始する。
 
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル! 来たれ地の精、花の精!
 
 夢誘う花纏いて蒼空の下駆け抜けよ一陣の嵐! “春の嵐”!!」
 
 花びらを纏った旋風がフェイトに襲いかかるが、対するフェイトは慌てることなく大地を隆起させて障壁となしネギの魔法を防御してみせる。
 
「……小賢しい!」
 
 舌打ちし、新たな詠唱を開始。
 
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル! 闇の力よ、ここに集い全てを貫く光となれ!
 
 “魔閃の光”!」
 
 貫通力の高いレーザーのような砲撃がフェイトの展開した障壁を貫き切り裂く。
 
 しかし、既にその場にはフェイトの姿は見れず、
 
「やはり、君を仕留めるには近接戦に限るようだ」
 
 先程とは逆の体勢で、振り向き様にネギの顔にフェイトの拳が叩き込まれる。──が、それはネギの障壁によって阻まれ彼の顔にまで届かなかった。
 
 ネギの持つ障壁の予想以上の硬度と数の前に、僅かにだがフェイトの表情に険が走る。
 
 その僅かな隙を逃さず、ネギが至近距離から、
 
「“氷爆”!!」
 
 氷系の爆発魔法を発動。再度、ネギとフェイトの距離が強引に引き離された。
 
「……なるほど、少し君に対する認識を改めるとしよう」
 
 腹に受けた魔法の効果を確かめるように軽く撫で、しかし何の影響も無かったかのように振る舞う。
 
 ……大概、頑丈な野郎だな。
 
 ネギとしても、先程の一撃で展開していた障壁の半分を破壊されたのだ。正直な所、余裕といえるほどのものもない状態だった。
 
 両者共、相手を警戒し拮抗状態を作り出してしまいそうになった時、その均衡を破壊したのは、影を使って転移してきたエヴァンジェリンだった。
 
「コイツの相手が一番面白そうだな」
 
 影から出現すると同時、エヴァンジェリンが腕を振るいフェイトの身体を爪で両断する。
 
「……エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」
 
「そう、アタナシア・キティちゃんだ!」
 
「貴様は喋るな小僧!」
 
「……キティ?」
 
「そこで不思議そうな顔をするな貴様!」
 
 叫んでいる内にフェイトの身体が水になって崩れる。
 
「……幻術か」
 
「なら、本人は……、上か!?」
 
 慌てて上を振り向いたネギ達の視線の先、そこには巨大な石柱を幾つも召喚したフェイトの姿があった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ネギとフェイトの戦闘が激化していく中、生徒達もまた、戦闘の渦中に居た。
 
「皆の護衛は、私達が務めます! 桜咲さんもアスナさん達の援護を!」
 
 ネギ不在時の司令塔を務めるあやかの命に従い、刹那も戦闘へ参戦する。
 
「まだ、開きませんの!?」
 
「それが、この箱は魔法で封印されていて、どんな術者にも開錠出来ないように施錠されているようなのです!」
 
 夕映の説明に歯噛みするあやか。
 
 ……否、魔法で開錠が出来ないようにしてあるのならば、その魔法を無効化してしまえば。
 
「アスナさん!!」
 
 何かを思いついたあやかが、夕映から強引に封印箱を奪い、それを戦闘中の明日菜に向けて投げつける。
 
「許可します! ブチ壊してさしあげなさい!」
 
 明日菜は自分に向けて飛んでくる箱が何なのか? 何故、自分がそんな事をしなければならないのか? 理解しないまま、しかしそれでもあやかが無意味な命令をするはずがないと信じ、振り向き様に封印箱に拳を叩き付ける。
 
 あやかの見越した通り、明日菜の力によって封印箱に施された魔法が無効化され、箱が砕け、中に収められていたアイテムが散開した。
 
 四散するアイテムを各々が手に取り、
 
「──“来たれ”!!」
 
 響き渡る少女達の掛け声。
 
 閃光と共に、少女達の元にアーティファクトが現れる。
 
 それらを手にした少女達は決意を新たに敵を睨み付け、
 
「さあ、反撃を開始しますわよ!」
 
「おう!!」
 
 気合いを入れて、陣形を再編成する。対する敵も油断無く構え、小柄な魔導士がゲートの要石に張り付き破壊を始め、残った二人がその護衛に回る。
 
「大変!? ゲートの要石を破壊されたら、魔法世界と旧世界とが隔絶されちゃう!」
 
「それって何? 私達帰れなくなるって事?」
 
「それは流石に冗談で済まないわよ!?」
 
 強引に突破し、要石の破壊を阻止しようとする少女達だが、そんな彼女達の頭上に巨大な石柱が降り注ぐ。
 
「クッ!?」
 
 その大規模破壊魔法の前には、反撃する余裕などなく、それぞれが防御に集中せざるを得ない。
 
 そんな中、遂にゲートの要石が魔導士の手によって破壊されてしまう。
 
「楔の破壊完了。離脱用ゲート確保、脱出出来ます」
 
「うん……」
 
「ほな、ズラかりましょか〜♪」
 
 この場から脱出しようとするフェイト一味に対し、立ち塞がるのはネギだ。
 
 彼は不敵な笑みを浮かべて、
 
「まあ、そう急ぐなよ。もうちょっと遊んでっても良いだろう?」
 
 告げ、詠唱に入る。
 
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル! 大地と大気の精霊よ! 古の契約に基づき、その義務を果たせ!!」
 
 その詠唱から、ネギが何をしようとしているのかを悟ったフェイトは僅かに眉根を寄せ、
 
「彼らにも強制転移を……、世界の果てにバラバラに……」
 
「ちょ!? こんな所でそんな魔法を使ったら!?」
 
「停めなさいネギ! そんな事したら、流石にタダで済まないわよ!?」
 
 一度、その魔法に巻き込まれて酷い目にあった事のある高音とアーニャが必死にネギを停めようとするが、見境の無くなった今のネギに理屈は通じない。
 
「知った事かぁ!!」
 
 既に魔法は発動しており、その前兆としてゲートポートを中心に局地的な大地震と空では黒雲が渦巻き、雷が発生している。
 
 勿論、ネギも正気を失っているわけではなく、ちゃんと生徒達や職員達には保護用の防御魔法を施してあるが、それでもこの魔法は強力過ぎた。
 
「“天地引き裂く轟爆”」
 
 直後、ゲートポートが爆砕する。
 
「何すんのよ、このバカァ──!!」
 
「ネギのアホぉ──!?」
 
 降り注ぐ瓦礫から悲鳴と罵詈雑言を飛ばしながら逃げまどう生徒達。
 
「きゃぁ──!?」
 
 亜子の頭上に瓦礫が落下してくるが、それは予めネギが展開しておいた障壁によって粉々に砕かれ、事なきを得る。
 
「つーか、俺には障壁張って無いんかい!?」
 
「私も!?」
 
 抗議の声を挙げるのは小太郎と明日菜だ。他にはヘルマンやエヴァンジェリン、ネカネなど、自力で何とかしそうな者達には魔力節約の為、障壁を張っていない。 
 
 そんな中、ネギは平然とした態度でフェイト達に視線を送り、
 
「瓦礫に埋もれて溺死しろ!」
 
「……それは溺死とは言わんだろ?」
 
 エヴァンジェリンの的確なツッコミを受けつつ、その足下に転移用の魔法陣が発動する。
 
「ん? どうやら、俺達も跳ばすつもりらしいな?」
 
「なに、その前に術者を仕留めてやるさ」
 
「その方が手っ取り早いか」
 
 ネギ達の考えに賛同した幾人かが、同時にフェイト達に襲いかかるが、それよりも早く当の術者が転移してしまった。
 
 一人転移を遅らせたフェイトはネギに向け、
 
「君の成長は認めよう、ネギ・スプリングフィールド。……だが、足手まといを抱えてこちらの世界で、何処まで僕達に喰らい付いて来れるかな」
 
 そう言い残し、フェイトの身体が転移した。
 
 それを受けてネギは舌打ちし、
 
「手前ぇの思ってるよか、よっぽど骨のある連中だぞコイツらは。
 
 ──精々、首洗って待ってろや白髪野郎。絶対、泣いてゴメンなさいって言わせてやる」
 
 中指を立てながら告げ、踵を返し、転移が停められない以上、せめて何人かだけでも近くに置いておこうと救助に向かった。
 
 
  
 
  
 
 
 
 
 
 生徒達が強制転移させられ、全壊し瓦礫の山と化したゲートポート跡地で、取り残されたマクギネスは瓦礫の一つに腰を下ろして溜息を吐き、
 
「……流石に、今回ばかりは完全にはフォローしきれないわよ、ネギ君」
 
 とはいえ、これで終わりとも思えない。
 
 今は出来る事をしようと判断し、マクギネスは無事だった職員達に指示を出すと他のゲートポートに向かう。
 
 何が起ころうとしているのか? は分からないが、それにネギ達が巻き込まれたのは事実。
 
 そして今回の一件は、自分一人では手に余るだろう。
 
「……助っ人が必要ね」
 
 それも強力な。
 
「……急ぎましょう。嫌な予感がするわ」
 
 呟き、マクギネスは急ぎ、その場を後にした。 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 フェイト達の強制転移魔法によって跳ばされたネギ。
 
 今、彼は何処とも知らぬ密林の中、寝かされていた。
 
「うっ……」
 
 最後にある記憶は、跳ばされそうな生徒達の中でも戦う手段を持たない者達だけでも手元に引き寄せようとして、降ってきた瓦礫の直撃を受けた所で意識を失っている。
 
「…………」
 
 薄く目を開き、差し込む光を鬱陶しげに眉を顰め。眼前にいる女性が誰なのか? を探ろうとして、優しく頭を撫でられた。
 
「大丈夫。……今は休んで」
 
 慈愛に満ちた声に逆らう事が出来ず、再度瞼を閉じて眠りに落ちていくネギ。
 
 その優しさに、思い出の中にすら居ない人物の名を呟く。
 
「……母さん」
 
 まだ、そう呼ばれるような年齢ではないのだが、無意識にでも彼が僅かに心を開いてくれたような気がして、那波・千鶴は安堵の吐息を吐き出した。
 
「那波さん。ハイ・マスターの様子は如何でしょう?」
 
 茂みの中から姿を現したのは、それまで水浴びをした茶々丸と鳴滝姉妹の妹、鳴滝・史伽に美空の主人であるココネだ。
 
「ネギ先生、大丈夫ですかー?」
 
「…………」
 
「えぇ、さっき目が覚めて、また眠ちゃったわ……」
 
「そうですか……。どちらにしろ、夜になって星が出てこないと星の位置から現在地も判断出来ませんし、ハイ・マスターにはそれまでは休んで魔力を回復していただきませんと」
 
 告げ、心配そうにネギの寝顔を三人で見つめる。
 
「……茶々丸さん」
 
「何でしょう? 那波さん」
 
「ネギ先生のお母様って、どのような方か知っていますか?」
 
 との千鶴の質問に、茶々丸はデータを検索し、
 
「いいえ、ハイ・マスターがお生まれになってすぐに他界したと。それからは5歳頃までネカネ様のご実家の方で預かられていたとか」
 
 その言葉に、那波は息を呑む。
 
「……そう」
 
 ならば、先程の言葉は、顔も覚えていない母親と自分を重ねたという事だろうか?
 
 千鶴は、ネギの髪を優しく梳り、
 
「……せめて、眠っている間だけでも良い夢を見ていて欲しいわ」
 
 千鶴の願いが通じたのか? ネギは幼い自分が、両親と共に遊ぶ夢を観る事が出来た。
 
 ……それから、3時間後。ようやく目を覚ましたネギは茶々丸から詳しい現状を聞く。
 
 星の位置から確認した現在地とゲートポートでダウンロードした地図から確認した所、今、彼らが居る場所は、
 
「エリジウム大陸のケルベラス大樹林。……ここかぁ」
 
 しかも、世界中に散ってしまっている仲間の場所は分からないときている。
 
「一直線にメガロメセンブリアに行くわけにもいかないわけか」
 
「はい……、途中で仲間達と合流しつつ、メガロメセンブリアを目指すのがベストかと」
 
「面倒臭ぇ……。せめて位置だけでも分かればな」
 
 ウンザリげに吐き出し、効率の良い方法を模索するネギだが、そんな彼に茶々丸は小さなピンバッチを取り出して見せる。
 
「……何だ? それ」
 
「こちらに来ているメンバー全員にマスターが配られた、“白き翼”の会員証のような物です。
 
 魔法と機械の融合で作られており、様々な機能が付けられています」
 
 説明し、バッチを用いて探索を始める。
 
「……俺、貰ってねえぞ? つーか、“白き翼”って何だ?」
 
 何やら自分の知らない所で話が進んでいるようで、面白くない。
 
「パーティー名だよ。ネギ先生のお父さんが居た“紅き翼”に対抗して“白き翼”だってキティーちゃんが言ってた」
 
 何の悪気もなく答える史伽に対し、ネギは訝しげに眉を寄せ、
 
「……俺の名付た、“大ネギま団”はどうした?」
 
「却下されてましたよ」
 
 すげなく答えてくれたのは千鶴だ。
 
「キティ──!!」
 
 ネギはこの場に居ない使い魔に向け、怨嗟の籠もった叫びを挙げる。
 
 その内に探査を終えたのか? 茶々丸が調査結果を報告してくれた。
 
 北西に5つ。東北東に6つ。いずれもバラバラに点在しているらしい。
 
 その他にも幾つか数百q単位で点在しているようではあるが、数が足りないという。
 
「おそらく、探知限界の1800qを越えているものと思われます」
 
 ……杖に乗って行けば、すぐに合流出来るかもしれねえが、定員は自分を含めても3人が限界。
 
 かと言って、自分だけが先行して合流しても、残された者達が不安だ。
 
 いくら茶々丸といっても、足手まといを何人も抱えてこの密林を無事に越えられるとは思えない。
 
 ……つーか、相手も移動してる可能性がある以上、茶々丸に同行してもらわないと、場所が特定出来ねえんだよな。
 
 その間、千鶴と史伽、そしてココネの三人で生き残れる可能性は0%だろう。
 
「密林上空には、危険な巨大生物も多数存在しますので、余り推奨出来ません」
 
 との茶々丸からの助言を得て、ネギは結論する。
 
「なるべく急いで合流するぞ」
 
 皆、何らかの戦闘手段は持っているので、そう簡単にくたばったりはしないだろうと仲間を信じる事にしたネギ。
 
 だが、それでも夜間に行動するのは危険過ぎる。
 
 結局、その日はその場で休み、翌朝出発する事にした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 千鶴を抱きかかえ更に史伽をおぶり、茶々丸にはココネを頼んで荷物は己の影に収納する。
 
「トバすぞ。振り落とされないようにしっかりと掴まってろよ」
 
 ネギの忠告に従い、千鶴達がネギの服の裾をしっかりと握り締める。
 
「──どっちだ? 茶々丸」
 
 とのネギの問い掛けに、茶々丸は視線を目的地の方へ向け、
 
「先導します。余り急ぎすぎると身体が保ちませんのでペース配分に気を付けてください」
 
 告げ、密林を駆け出す茶々丸を追って、ネギも走り出す。
 
 大木の陰を抜け、峡谷を飛び越え、肉食生物から身を隠しながら先を急ぐ。
 
 そして、その日の夕刻には美しい湖の湖畔にまで辿り着いた。
 
「ハァハァ……、後どれくらいだ?」
 
 美しい景色など眼中に無い様子で、ネギが茶々丸に問い掛ける。
 
 しかし、茶々丸はその問い掛けには答えず、この場でキャンプを張る事を提案した。
 
「一日中走り詰めだったため、現在ハイ・マスターの体力は限界に近づきつつあります」
 
 実際、魔力的にはまだ幾分余裕はあるが、体力的に限界が近かった。
 
 元来引きこもり気味なネギにしてみれば、この強行軍はかなりキツい。だが、それでも強行軍を続けようと告げるネギに、茶々丸は彼同様消耗した千鶴達を指し、
 
「それに那波さん達も、体力的に限界です。この場は休息を……」
 
 決して乗り心地の良いとはいえない移動方法だ。しがみついているだけでもかなりの体力を消耗したのだろう。
 
 千鶴達の顔色も青ざめていた。
 
「……分かった。キャンプの準備をしよう」
 
 告げ、キャンプの準備を始めようとネギが影から荷物を取り出そうとした所で、巨大な魔獣の襲撃を受けた。
 
「チッ!?」
 
 舌打ちし、少女達の手を取りその場を跳び去った直後、それまでネギ達がいた場所に落雷が落ちる。
 
「謎生物が……、調子に乗ってんじゃねぇ!!
 
 ラス・テル・マ・スキル・マギステル!
 
 しなるその身はあたかも小枝! うなるその声あたかも疾風。
 
 闇に閃き虚空を引き裂く、汝の名は神鞭と申せり!
 
 ──“神鞭の刻歌”!!」
 
 ネギが魔力を縒り合わせて作り出した光の鞭で魔獣を打ち据えようとするも、魔獣は魔法障壁を保持しているのか? 余り魔法の効果は見られない。
 
「一発キャラの分際で生意気な野郎だ!?」
 
 とは言っても、ネギの残り魔力も余り多くない。
 
 ……一撃で仕留めるしかねぇな。
 
 茶々丸に少女達の護衛を命令して、詠唱を開始。
 
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル! 風の章、――第四の神畏!
 
 伝承にありしは荒ぶれる風の王! その拳をもちて愚者を撃ちぬかん!!」
 
 ……砲撃系は効果が薄そうだが、これなら!
 
 ネギの背後に現れたのは、風の暴君と呼ばれる異教神の一種。
 
「“風の章・第四の神畏”!!」
 
 ネギの動きをトレースするように、風の暴君が拳を振るい魔獣を殴り飛ばした。
 
 当然、魔獣も反撃しようと雷撃を放ったが、風の暴君の前には効果はなく、そのまま湖上を数回跳ねた後、尻尾を巻いて逃げていった。
 
「待てコラ、晩飯!?」
 
 追撃しようとするネギだったが、魔力が尽きたのか? その場に頽れてしまう。
 
「ネギ先生!?」
 
 慌てて駆け寄る生徒達。
 
 茶々丸は素早くネギの容態を確かめ、
 
「……魔力の枯渇と、空腹のようです。
 
 取り敢えず、命に危険は無いかと」
 
 その言葉を聞いて、安堵の吐息を吐き出す少女達。
 
「じゃあ、取り敢えず食事の準備ね」
 
 千鶴の提案で、食事の準備をする事になったのだが、肝心の食料が無い。
 
 否、一応携帯食料が幾らかはあるが、あくまで非常食なので出来るだけ消費は避けたい所だ。
 
「おそらく、先程ハイ・マスターが魔獣を追い払ってくれたので、暫くは他の獣も寄りつかないと思います」
 
 と言い残し、茶々丸は食料の調達に密林へと向かった。
 
 その間、少女達はカマドを拵えて火を起こし、ネギの看病をして茶々丸の帰りを待つ。
 
 30分程して帰ってきた茶々丸の手には、猪のような生物が握られており、彼女はそれを何の躊躇いも無く捌き始めるのを見て史伽などは顔を蒼白にするが、それでも生き残る為に泣き言一つ言わずに耐えた。
 
「加工された物は食えて、自分で捌くところからは無理とか甘えてんな。食いたく無かったら、その分俺が食う」
 
 とは、匂いに釣られて目を覚ましたネギの言葉だ。
 
 元よりサバイバル慣れした彼にしてみれば、食料を調達出来るだけマシな方で、飲まず食わずで3日以上過ごすなどざらだった。
 
 ともあれ、食事も終わった後は茶々丸のネジ巻きだ。
 
 以前から幾度も茶々丸のゼンマイを巻いた事のあるネギは、この行為を楽しんでいる節がある。
 
「んじゃ、ちゃっちゃかゼンマイ巻くぞー♪」
 
 ネギの言葉にビクリと反応してみせる茶々丸。
 
「い、いえ、ハイ・マスター。まだエネルギーには余裕がありますし、今日の所は……」
 
「遠慮すんなー!」
 
 素早く茶々丸の背後に回り込み、彼女の後頭部にネジ巻きを差し込む。
 
「ひぅ!? せ、せめて……、皆さんの居ない所で……」
 
「面倒だから、パス」
 
 満面の笑みで告げ、ゼンマイを巻いていく。
 
「ひぁ! あん……、だ、駄目です……、ハイ・マスター……、ん……。お、お願いしま……す。もっと、ゆっくり……」
 
 何故だか艶っぽい声を出す茶々丸に、思わず見とれてしまう面々。
 
 やがて、ゼンマイを巻き終えると、一仕事終えた満足感から額の汗を拭い、
 
「いやー、何遍やっても面白いわ、コレ」
 
 エネルギーを充電した筈なのにぐったりしている茶々丸を眼下に、ネギはそのままゼンマイを自分のポケットの中にしまってしまう。
 
「あらあら、余りいじめちゃ駄目ですよネギ先生」
 
 やんわりとネギを窘める千鶴に対し、ネギはポケットの中のゼンマイを玩びながら、
 
「別にいじめてるわけじゃねぇよ。他のシスターズにも好評なんだぞ、俺のネジ巻き」
 
 ちなみに、他の茶々丸シリーズもチャチャゼロ以外の全員、外で活動出来るようにとゼンマイ駆動式に改造されている。
 
 それはともかく、今は休息をとる事が何よりも大事だ。
 
「ほれ、お前等も早く休んどけ。夜更かししてると明日からキツイぞ」
 
「えー、でもまだ8時前ですー」
 
「起きてても、やる事なんぞ無いだろうが……」
 
 ネギにそう言われて、渋々眠りにつく史伽。ネギも日中の疲れが出たのか? すぐに眠りについた。
 
 
 
        
 
 
 
 
 
 
 ──38時間前。  
 
 フェイト一味の強制転移魔法で密林に放り出された長谷川・千雨は、絶望していた。
 
「……どこなんだよ、ここはぁ──!!」
 
 などと絶叫してみた所で、状況が好転する筈もなし。
 
 取り敢えず深呼吸して自身を落ち着かせると、持ち物をチェックする。
 
「……手元にあるのは、仮契約カードに携帯電話とノートパソコン(超&葉加瀬製)。それに予備のバッテリーが2本に封印用の札が10枚か」
 
「一応確認しておくと、一回の封印に必要な札は4枚。バッテリーは封印2回で空になるですよ?」
 
「……分かってるよ」
 
 傍らに浮かぶ電子精霊のウィル子とその周囲に漂う7匹のネズミ型電子精霊達。
 
「取り敢えずは、戦闘を避けて街を目指そう」
 
 ウィル子が魔法世界の地図をダウンロードしておいてくれたのが助かった。
 
 方位などはネットから引用してきた知識から、星の位置で見極める事が出来るし、後はふざけた化け物達と出会わないようにして街まで辿り着ければ……。
 
 否、それよりも大事な問題がある。
 
「……食料か」
 
 手持ちの食料は、ローブに入っていたカロリーメイト一箱のみ。
 
「……考えていてもしょーがねぇか。
 
 今は一歩でも街に向かわねえと……。
 
 それで、近場の街まで何qくらいあるんだ?」
 
「はいー……、ざっと310qくらいです」
 
 電子精霊の1匹が告げる現実に、思わず立ち眩みする。
 
「……マジかよ」
 
 諦めの混じった呟きを零し、それでも一歩一歩前へと進む。
 
 口から零れるのは、ネギへの愚痴とこんな選択をしてしまった自分への悔恨だ。
 
「……やっぱり来るんじゃなかった」
 
 力無い足取りで、3時間ほど歩いた頃だろうか?
 
 背後から何やらやばそうな足音が地響きを伴い近づいてきた。
 
「……おいおい、何かヤバイ物が近づいて来てんじゃないだろうな?」
 
 背の高い樹木を掻き分け迫ってくるのはまるで恐竜のような怪物。
 
「……げ!? 何処かに隠れてやり過ごすしか……」
 
 そう思案した千雨の耳に聞こえてきたのは、聞き覚えのある同級生の悲鳴。
 
「誰かぇ、助けてぇ──!!」
 
「……この声は、柿崎か」
 
 あんなデカイ怪物相手に勝てるとは思えない。
 
 ……ここは、柿崎に犠牲になってもらって、やり過ごすのが吉か。見放したとしても、何処にも証人は居ないわけだし、私が攻められる謂われないはずだ。
 
 と思案するも、実際の所そのような選択を出来るほど長谷川・千雨という少女は非情な人間ではないのだ。
 
「あー……、クソ!?」
 
 頭を掻きむしり、プログラムを起動。
 
「征くぞ、ウィル子!」
 
「はいですよー!」
 
 ハッキリと柿崎の姿が見えてくるのを確認して、声を張り上げる。
 
「こっちだ柿崎!」
 
 千雨の声に反応して、彼女の存在を確認した柿崎はしかし、
 
「逃げて! 長谷川!?」
 
「うるせぇ! 何とかしてやるから、そのまま走り抜けろ!」
 
 既に千雨の前方にはウィル子が四方にお札を貼ってある。
 
「お札の一枚の有効半径は3mですよー」
 
「分かってるよ!?」
 
 ……後、5m。……4m。……3m。……2、……1。
 
「──消去(デリート)!!」
 
 叫びと共に閃光が視界を埋め尽くし、周囲の樹木や地面と共に怪獣の姿が消え去っていた。
 
「な、何とかなったか……」
 
 安堵し、その場にへたり込む千雨。
 
「マスター、危ない!?」
 
 ウィル子の声に振り向いた千雨の視界に映ったのは、右手側から突如現れ、彼女に襲い掛かろうとしている数十本の触手を生やした気持ちの悪い生物。
 
 札を貼っている余裕はなく、座り込んでいる為、跳び退く事も出来ないまま、千雨が触手に絡め取られようとしたその瞬間、銀光が閃き、触手達を全て切り裂いた。
 
「だぁああああ!!」
 
 それを成したのは先程、走り去っていったはずのクラスメイト柿崎・美砂だ。
 
 彼女は手にしたギターのボディーに仕込まれた刃で触手を切り裂くと、その切っ先を化け物に突き立てる。
 
 そして、ベルトのバックルを外してギターに装着。
 
 すると、ギターが展開し……、
 
「音撃斬! 雷電激震!!」
 
 超至近距離から音の震動波を直接化け物の体内に叩き込む。
 
 激しくギターを掻き鳴らす柿崎。──演奏が終わり、ギターの音色の余韻が残る中、化け物が爆散した。   
 
 それを確認して、安堵の吐息を吐き出してその場に座り込む柿崎。
 
「そ、そんな事が出来るんなら、最初からやれよ!」
 
「無茶言わないでよ!? 見たでしょ? 密着するくらい近づかないといけないのよ?
 
 あんな怪獣相手にしてやったら、こっちが潰されちゃうわ!?」
 
 一頻り怒鳴り合った後、二人は泣き笑いのような表情で抱き合い、
 
「い、生きてて良かったぁー」
 
「まったくだ……。取り敢えず、道連れが出来た事に関しては心強いな」
 
 その油断が悪かった。
 
 もう一匹潜んでいた触手の化け物が二人の身体を絡め取る。
 
「うぉ!? まだ居やがったのか!?」
 
「こ、こら! 放しなさいって!!」
 
 見れば、柿崎も同じように触手に捕らわれていた。
 
「こ、この……」
 
 柿崎がギターを突き立てようとするも、触手に手首を締め上げられて取り落としてしまう。
 
「しまった!?」
 
 そして千雨も同様に、ノートパソコンを取り落としてしまっている。
 
「く、くそ!? 何とかして助けろウィル子!?」
 
 とは言われても、現在彼女に攻撃手段はない。
 
「え、えっと……、じゃあ、先程封印した怪獣をロードするというのは?」
 
「大却下だ! つーか、そんな事したら、死期が早まる!」
 
 そうこうしてる間に、触手の化け物は千雨と柿崎の身に着けている服を溶かし始める。
 
「ち、ちくしょう!?」
 
「だ、誰か、助けてぇ──!?」
 
 柿崎が助けを呼ぶが無駄だ。
 
 ここは周囲300qに人っ子一人いない密林。助けなど来るはずもない。
 
 だがそれでも、助けを呼ぶくらいしか彼女達に残された手段は無いのだ。
 
「た、助けてよぉ、ネギ先生!!」
 
「あいよ♪」
 
 すぐ間近で聞こえてきた声に振り向くと、化け物の頭上にいつの間にかネギが座っていた。
 
 ネギは化け物の頭(?)に手を添えると、
 
 ──解放。
 
 震動波をゼロ距離から放ち、一撃で失神させた。
 
 触手の締め付けが弛み、落下する千雨と柿崎をネギが受け止める。
 
「よくもまぁ、しぶとく生き残ってたもんだ」
 
 ネギなりに彼女達を褒め、地面に降ろしてやり、千雨にローブを柿崎にシーツを羽織らせて、頭を撫でてやる。
 
「……大したもんだな。帰ったら牛丼奢ってやるよ」
 
 告げ、背後から近づいてくる気配に振り返ると、そこには二日ぶりに会うクラスメイト達の姿があった。
 
「さて……、こんな所で立ち話も何だし場所を移すか」
 
 告げ、少し離れた場所にある湖畔に向かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 昨日キャンプを張った場所から、数十qほど離れた所で再度キャンプを張る。
 
 茶々丸の探査によると、もう一組のグループがこちらを目指して近づいて来ているらしい。
 
 ならば、下手に動くよりも、ここで待ち合流した方が良いのではないのか? との事。
 
 千雨と柿崎にも疲労が見えるので、ここで休息も兼ねてキャンプを張る事にしたのだが、現在ネギは湖に背を向けて料理の最中だった。
 
「……なんで俺が料理当番」
 
「こっち見んじゃねぇぞ、ネギ先生!」
 
 現在湖では、少女達が水浴びの最中だ。
 
「心配すんな! お前の触手プレイはシッカリと脳内に記憶した」
 
「すんじゃねぇ!!」
 
 湖の方から投げられた石を振り向く事無くキャッチするネギ。
 
 たき火の周囲では、昨日の残りの肉と湖で採ってきた魚が良い匂いを立てて焼けている。
 
「早く上がんねえと、全部食っちまうぞ!」
 
 告げると、ネギが自分用に確保しておいたはずの肉が横から伸びた手によって奪われた。
 
「……ほう、イギリス人のくせになかなか美味いやないけ」
 
「伊達に超包子で手伝いしてねえよ」
 
 自信満々に告げ、声を掛けたのが行方不明になっていた小太郎である事気付いて、勢い良く振り向く。
 
「何、堂々と人の晩飯パクってやがる!?」
 
「えぇやんけ! まだ残っとるんやろが、ケチケチすんなや!」
 
「自分の分は、自分で狩ってこい!」
 
 暫く罵り合いを続け、ようやくその場に小太郎以外にも合流した者達が居る事に気付く。
 
「お!? ハカセと佐倉も一緒だったのか? ……小太郎に変な事されなかったか?」
 
「するか!?」
 
「やはり私にアウトドアは向いてませんね……」
 
 疲れの見える表情で零す葉加瀬に、
 
「あの……、お姉さまはご一緒じゃないんですか?」
 
 パートナーである高音の心配をする愛衣。
 
「いや、高音とは一緒じゃないけど、まあ大丈夫だろ? 何だかんだ言って、アイツこっちの世界出身なんだし」
 
「だと良いんですが……」
 
 取り敢えず、新たに合流した5人の話をまとめると、
 
 柿崎の主要武装であるサウンドエナジーシステムや千雨の予備バッテリーや札も、Nノーチラス号に積みっぱなしにしてあるとの事。
 
 そのNノーチラス号は、現在、超が封印箱に入れて所持しているであろうが、あれは茶々丸シスターズが揃わないと動かす事が出来ないとの事。
 
「……結局、超と茶々丸シスターズが揃わない事には、移動手段に不便するって事か」
 
「そうなりますね」
 
 久々にマトモな食事にありつけたお陰で若干持ち直した葉加瀬が冷静に分析する。
 
「しかし、人数増えてきたら、移動手段にも困るな」
 
 抱きかかえて移動するにしても、一人頭二人が限度だろう。
 
「その事に関しては考えがあるから大丈夫だ」
 
 手にした真新しい魔導書を叩き、自信満々に告げる。
 
「つーか、覚えたのに実用性に欠けるんですっかり忘れてた魔法があってな」
 
「忘れんなや、そんなもん」
 
「やかましい。700以上も覚えてんだ。偶には忘れたりもするってーの」
 
 ともあれ移動手段は確保出来たので、明日に備え早めに就寝した。
 
 
   
 
 
 
 
 
 
 
 翌朝。
 
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル。
 
 来たれ不運な旅人の嫡子、名馬の裔よ。
 
 天空を越え、海原を越え、灰色のその身で我等を望みし地に至らしめよ。
 
 ……“神王の馬”」
 
 ネギの呪文と共に現れたのは八本足の巨大な馬のような生き物だ。
 
「定員多くなると、その分移動速度は落ちるけど、それでも馬くらいの速度は出るからな」
 
 おんぶされて密林を走られるよりは、よっぽど乗り心地は良いだろう。
 
「その代わり、俺の魔力はコイツの制御に全部使われるから、護衛はシッカリしろよコタロー」
 
「ふん、まあ、任せんかい」
 
「……んじゃ、行くか!」
 
 こうして、移動速度は若干落ちたものの、それでも4日でヘカテスの街に到着する事が出来た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ヘカテスの街に着いたネギ達。
 
 そこでは獣人や妖精など、多種多様な人種が入り乱れ、更には街の所々で魔法による爆発が起きるなどといった余り治安の良くない場所だった。
 
 そんな中、まずは腹ごしらえと、買い食いするネギ達の目に飛び込んできたのは街頭テレビの映像だ。
 
 それによると、何でも世界の各所でゲートポートが破壊される事件が起こっているらしい。
 
 更にその事件の犯人として、ネギ達が指名手配されていたのだ。
 
「……なんじゃそりゃぁ──!!」
 
 思わず絶叫するネギ。
 
 目立っては拙いと、小太郎は咄嗟に彼を抑え込もうとするが、ネギは強引にそれを振り払い、
 
「巫山戯んなッ!? 何で、俺が……、たった30万ドラクマ程度なんだ!!
 
 もっと高額なはずだろう!? つーか、キティーの野郎、俺より圧倒的に高いじゃねぇか!! 納得いくかそんなもん!?」
 
「気にする所、そこなんかい!?」
 
 隠れるのも忘れて、思わずツッコんでしまう小太郎。
 
 対するネギは街頭テレビに映った要石を破壊する自分を指さし、
 
「俺があんなしょぼい魔法使うか!? 俺ならゲートポートごと破壊するわ! つーか、破壊したわ!!」
 
「……言ってる事が間違って無いだけに、反論出来ねぇ(悪い意味で)」
 
 頭を抱える千雨達。
 
 ともあれ、街中でそんな絶叫していれば嫌でも目立つ。
 
 いつの間にか取り囲まれていたネギ達。
 
 小太郎達に至っても、ネギほどではないが、懸賞金が掛けられているのだ。
 
「……まさか、こんな所に居たとはな」
 
「へへへ、30万ドラクマか……。3年は遊んで暮らせるな」
 
 既にネギ達を捕らえたつもりでいる男達に対し、ネギは不機嫌そうな視線を向けつつ、
 
「……始めに言っておく、今の俺はかーなーり機嫌が悪いからな。
 
 手加減とか出来ないと思っとけよ?」
 
「……しゃーないのー」
 
 何だかんだと文句を言いつつも、楽しそうに戦闘準備に入る小太郎。
 
「おいおい、私ら戦闘向きじゃない奴らも居る事忘れてないか?」
 
 ウンザリげに告げる千雨に、ネギは一瞬茶々丸に視線を向けると、
 
「茶々丸、佐倉。非戦闘員の護衛」
 
「──了解しました、ハイ・マスター」
 
「……私が指名手配犯」
 
「……あー、佐倉はつかえねぇか」
 
 自分が犯罪者となっている事にショックを隠しきれない愛衣に苦笑を浮かべ、ネギは茶々丸に頑張るように告げる。
 
「そっちの赤毛の野郎は、俺が相手してやるよ」
 
 そう言って前に出てきたのはスキンヘッドの巨漢だ。
 
「うおぉ! バルガスのアニキまで出てきたのか!? アイツ等終わったな」
 
 騒ぎ立てるギャラリーだが、その歓声も次のネギが放った一撃で静寂へと変わった。
 
 ──解放。
 
「……“断罪の剣”!」
 
 バルガスと、その背後に居た賞金稼ぎ達がまとめて氷結爆砕に巻き込まれて吹き飛ばされる。
 
 幾人か? ギャラリー達も巻き込まれていたようであるが、ネギはその事を微塵も気にした様子はなく、
 
「……次ぃ!」
 
「居らへん居らへん。もう終わりや」
 
 小太郎の声に振り向いてみれば、残っていた賞金稼ぎ達も、全て小太郎の手によって撃沈させられていた。
 
「待て、俺のストレス発散はどうなる!?」
 
「知るかい、そんなもん。
 
 そんな事よりも、ほれ。茶々丸が次の仲間の居場所特定したみたいやで」
 
 小太郎が指さす先、茶々丸が示すのは一件の酒場だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 酒場に入ったネギ達はそのまま思い思いの席に着き、その内カウンターに陣取ったネギと小太郎は、それぞれミルクティーとこぶ茶を注文する。
 
 その間にも少女達は店内を見渡し、クラスメイトを探そうとするが、どうにも店の中には知り合いの姿が見当たらない。
 
 ネギは出されたミルクティーを一口味わうと、大きく目を見開き、
 
「このミルクティーを淹れたのは誰だぁ!?」
 
 どこぞの陶芸家のような形相でバーテンダーに食ってかかった。
 
「お、お客様?」
 
 カウンターを飛び越え、バーテンダーが停めるのを聞かず厨房へと乗り込む。
 
「……何やっとんねんあのアホ」
 
 呟いてこぶ茶を一口啜り、
 
「……あぁ、そういう事かい」
 
 全てを納得した。
 
「ちょっとちょっと、停めなくていいの?」
 
 柿崎や史伽が心配そうに寄ってくるが、小太郎は平然とした様子で厨房の入り口を指し、
 
「仲間見つけたみたいやで」
 
 小太郎が指さす先、そこでは四葉・五月を伴って厨房から出てくるネギの姿があった。
 
「なるほど……、そんな事情があったのかい」
 
 話を聞くと、五月は住み込みで働かせてもらっていたらしい。
 
「いやー、サツキちゃんの料理は評判が良かったから残念だけどね」
 
 五月が出ていく事を、快く了承してくれたバーテンはカウンターから封筒を取り出し、
 
「これ、少ないけど今までの分のお給料ね」
 
……バーテンさん。ありがとうございます。
 
 深々と頭を下げて礼を述べる五月。
 
 これで、この一件は終了と一息吐き、ネギは世界地図を取り出すと、
 
「……で? 次は南の港町グラニクスか」
 
「はい、そちらから5人分の反応があります」
 
「うし、行くぞ!」
 
「せやけど、こうなってくると、ホンマ本格的な乗り物が欲し所やな」
 
 とはいえ、馬車を買えるほどのお金の持ち合わせなどあるはずもない。
 
 小太郎の言葉を聞いて、何かを思いついたのか? ネギは手を叩き、
 
「……おい、コタロー。お前捕まれ」
 
「あん?」
 
「その賞金で馬車買うから」
 
「ハハハ、面白い事言うやないけ。──そもそも、賞金額はお前の方が高かったやろが!?」
 
 睨み合い、一触即発の空気を作り出すネギと小太郎に割って入るのは、先程合流したばかりの五月だ。
 
 彼女は強引に彼ら口に自作の肉まんを押し込み、
 
ネギ先生もコタローさんも、お腹が空いているからイライラするんです。
 
 どうにも逆らいがたい雰囲気を醸し出す四葉に対し、両名共に頭が上がらない。
 
 ともあれ、方針が決まった以上、この場に留まり続けるわけにもいかないのが現状だ。
 
「うし、それじゃ行くか! 乗り合い馬車が出てたから、それに乗っていけば2日程度でグラニクスに到着するだろ」
 
「それは良いが、私達は変装してった方が良くないか? 先生達と違って、喧嘩売られても対抗手段が無いんだぞ」
 
 千雨の言葉を受け、ネギは己の影に手を突っ込み、
 
「これ飲んどけ」
 
 少女達に一粒づつ錠剤を渡していく。
 
「……何これ?」
 
 訝しげな表情で手の中の錠剤を見つめる柿崎に対し、ネギは平然とした口調で、
 
「年齢詐称薬。キティーの宝物庫からパクった」
 
 言われ、偶にエヴァンジェリンが大人の女性になっていたのを思い出す。
 
「ネギ先生は飲まないの?」
 
「見た目ガキだと、ナメられるからな」
 
「俺もいらんわ、リーチ短かなると不利やしな」
 
 結局、女性陣だけが薬を飲み、結果皆は年齢が下がって幼児化したのに対し、史伽だけが逆に16,7歳の女性に変化した。
 
「うわー、大人の女ですー♪」
 
 はしゃぎ喜ぶ史伽に対し、ネギは不憫そうに、
 
「……結局、成長しても胸は大して膨らまないんだな」
 
 史伽の胸は、どう贔屓目に見てもAカップだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ──二日後、港町グラニクス。
 
 ネギ達が街に到着したのを見計らうように、彼らの前に一人の幽霊が姿を現した。
 
『ネギ先生ぇ──!!』
 
 感動の余り、彼に抱きついてきたのは、出席番号1番の相坂・さよだった。
 
 もっとも、霊体である彼女ではネギの身体に触れる事も出来ずに透過してしまったが。
 
「まあ、お前に関しては微塵も心配してなかったけどな」
 
『ううう……、酷いです』
 
「つーか、お前死なないしなぁ……。通りすがりの除霊師がタダで祓おうとか思わない限り消滅する事無いだろ?」
 
 それに彼女とは使い魔の強固なラインが繋がっているのだ。
 
 使い魔に何か異常があれば、すぐに感知出来る。
 
「……で? 他にも何人か、この街に来てるようだけど、お前知ってるか?」
 
 とのネギの言葉に、さよは真剣な表情で頷き、
 
「結構、拙い事態になってます。詳しい話は朝倉さんから聞いてください」
 
 さよの案内で向かった先は、人通りの多い本通り。
 
 その一角で、弦の多い奇態な楽器を適当に弾きながら小銭を稼ぎつつ、情報収集する朝倉・和美の姿だった。
 
 当然、彼女も指名手配を受けているので、フードを目深に被ってサングラスまで着用している。
 
「よう、案外元気そうじゃねぇか」
 
「やっ♪ 思ったよりもお早い到着だね」
 
 気軽に挨拶を交わし、朝倉から現状を聞き出す。
 
 それによると、今この街には彼女達の他に和泉・亜子、大河内・アキラ、村上・夏美の三人が居るという事。
 
 亜子が風土病に掛かってしまい、それを助ける為に三人は最高級の魔法薬イクシールと引き替えにこの街を治めるボスと奴隷契約を交わしてしまったという事。
 
 その借金の額は100万ドラクマ。
 
 一応、指名手配犯という事はバレてはいるようだが、彼女達の賞金額よりも100万ドラクマ分働かせた方が、儲けが良いので、現時点では通報される心配は無いとの事。
 
 朝倉から一通りの説明を受けたネギは小さく頷くと、彼女に年齢詐称薬を飲ませて外見を幼い少女のものへと変化させて安全を確保してから、
 
「今の和泉達の状況は分かるか?」
 
「勿論」
 
 告げ、小さなモニターを取り出す。
 
 そこに映し出されているのは、熱の為、荒い息を吐きながらも、懸命に掃き掃除をする亜子の姿。
 
 その映像を隠し撮りしているのは、朝倉のアーティファクト“渡鴉の人見”だ。
 
 映像の中、熱でふらついた亜子が、柄の悪い男とぶつかりズボンを汚してしまう。
 
 その事で男に絡まれる亜子を助けようとアキラが庇おうとするが、男は水晶球を取り出してアキラの首輪に電撃を流して彼女を罰する。
 
「……朝倉、コイツ等、今何処に居る?」
 
 生徒に手を出された事にキレたネギが怒りを隠そうともしない声色で、朝倉に問い掛ける。
 
 底冷えするような怒気を纏ったネギの言葉に、朝倉は反射的に視界に映る一際大きな建物を指さしてしまう。
 
「ちょっと、ぶっ潰してくる」
 
 そう言い残して杖を影から取り出すと、ネギは一瞬で建物まで飛んでいった。
 
「ヤベェぞ!? あの建物に居んのは、この街のボスとか言ったな! そんな奴に真正面から喧嘩売るのは得策じゃねぇ!
 
 急いで、ネギ先生停めるぞ!?」
 
 慌てた様子で千雨が告げ、小太郎を嗾けてネギを停めさせに向かわせた。
 
 それを見送った後、少女達も件の建物に向かう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 電撃によってダメージを受け、跪くアキラ。
 
 そして男が強引に亜子の手をとり、汚れたズボンを拭かせようとすると同時、
 
「ぐぇ!?」
 
 男の身体が重力魔法によって押し潰された。
 
「悪いな、ちょっと遅れた……」
 
 頽れそうになる亜子の身体を腰に手を回して支えるのは、彼女達の担任教師。
 
「ね、ネギ先生!?」
 
 己の名を呼ぶ声に頷きで返し、亜子を下がらせるとネギは男を睨みつけ、
 
「よくも人の生徒、玩具にしてくれたな……。手前ぇら、殺してバラして並べて揃えて晒してやる」
 
 啖呵を切るネギの顔を見て、彼が30万ドラクマの賞金首である事を思い出した男達が顔に笑みを浮かべて彼を捕らえようとするも、次の瞬間には背後から強烈な蹴りを受けて吹っ飛んだ。
 
「落ち着けやネギ。今、問題起こしたら、更に面倒な事になるで」
 
 吹っ飛ばされた男達に代わって、そこに居たのは小太郎だ。
 
 小太郎の忠告に対し、ネギが口を開こうとするよりも早く、ネギの重力魔法によって地面に這い蹲ったままの男、トサカが気勢を挙げる。
 
「て、手前ぇら……、こんな事してタダで済むと思ってんじゃねぇだろうな!?」
 
 ……手遅れか、と頭を抱える小太郎に対し、ネギは酷薄な笑みを浮かべると、
 
「お前が心配する必要はねぇよ──」
 
 ラス・テル・マ・スキル・マギステル。
 
 闇の公子、悪の長子と、その王の名に於いて来たれ。
 
「すぐに気にする必要は無くなるからな」
 
 悪魔の肉芽よ、汝が贄を喰らい尽くせ。
 
 トサカの周囲を球形の閉鎖型結界が取り囲む。
 
 ──“暴凶の餓鬼地獄”。 
 
 次の瞬間、結界内と魔界が繋がれ、あらゆる物を喰らい尽くす餓鬼魂を召喚する。
 
「な、何だこりゃ!? って、ぎゃぁ──!!」
 
「とびきり邪悪な禁呪だよ。生きたまま食われちまいな」
 
 結界の表面には、不気味に蠢く肉塊しか見えないが、それでも漏れ聞こえてくる音から、中の男が、生きたまま肉を抉られ、骨を砕かれているのが鮮明に分かる。
 
「せ、先生! 止めてください!? このままやと、あの人死んでまいます!」
 
 何とかネギを停めようとする亜子だが、ネギはやんわりと彼女を引き剥がし、
 
「おい、死にたくなかったら、コイツ等の首輪外す方法を教えろ」
 
「か、鍵はボスが持ってんだ!? 俺じゃ外せねぇ!! 本当だ、信じてくれ!?」
 
「んー……、どうしよっかなぁ?」
 
「たす、助けてくれ!? ぐぁあああああ!!」
 
「先生ぇ!!」
 
 懸命にトサカの助命を願う亜子の熱意の前に、ネギは肩を竦めて軽く吐息を吐き出すと、小さく指を鳴らす。
 
 瞬間、トサカを捕らえていた結界が消滅し、そこには怪我一つ無く泡を吹いて気絶する彼の姿だけがあった。
 
「……え? コレは?」
 
「タダの幻術だよ。実際には傷一つ付いちゃいねぇつーの」
 
 とはいえトサカの精神には消しようのないトラウマが刻まれたであろうが……。
 
 ともあれ、ネギは亜子に治癒魔法を掛け、彼女の体調を回復させると、
 
「ちょっと、ここのボスと話ししてくるわ」
 
「ね、ネギ先生!?」
 
 またも乱暴な事になるのではないか? と心配そうな声を挙げる亜子に対し、ネギは自身に満ち溢れた顔でサムズアップすると、
 
「安心しろ。借金の踏み倒しは俺の得意技だ」
 
「威張る事じゃねぇだろが!!」
 
 横合いから現れた千雨(幼)の跳び蹴りがネギの側頭部に命中……、すると思われたが、障壁で防がれ何も起こらなかった。
 
 だが、それでもネギの行動を停める事には成功したので、彼女はまずネギに落ち着くように告げると、
 
「いいか? 先生。ここのボスは、幾つもの闘技場を経営してたりする有力者の一人らしい。
 
 無理矢理にそこの三人を奪うとなると、その後が拙い。色々と敵に回す事になる」
 
 例を挙げると、公共移動手段を使用出来なくなったり、宿に泊まれなくなったり、店での買い物が出来なくなったり、と様々だ。
 
 それは勿論、この街の事だけでなく、ここのボスと繋がりがある街でも同様のおふれが出される事になるだろう。
 
「一番、文句無いのは、100万ドラクマ払って、三人を買い戻す事だ」
 
「コタロー売っても、そんな金にはならねぇぞ?」
 
「まだ言うか? お前……」
 
 呆れ声で告げる小太郎を無視して、千雨は一枚の紙を彼らの前に提示する。
 
「近々開催される拳闘士の大会、優勝賞金が100万ドラクマだそうだ」
 
 なるほど、と頷き千雨の言いたい事を理解する。
 
「OK.OK.んじゃ、サクっと優勝してくるか」
 
 振り向き、亜子達に向け、
 
「つーわけで悪いけど、もうちょっと我慢してくれ」
 
「は、はい! あの……、ネギ先生も気を付けてください」
 
 亜子の励ましに、ネギは右腕を上げて応えた。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 拳闘士の入団試験として、訓練士に勝てれば合格という条件を出されたネギと小太郎。
 
「逃げんなら今の内だぞ? 兄貴は強ぇからなあ。
 
 何しろガキの頃、あのサウザンドマスターをボコ殴りにしたっつー話もあるくらいだからな!!
 
 ま、勝てとは言わねえよ、カワイソウだしな!
 
 二人がかりで5分保ったら許してやるよ! 手前ぇらじゃ、2分と保たないだろうがなぁ!!」
 
 嬉々として偉そうに告げるトサカに対し、ネギと小太郎は冷静に敵の戦力を分析し、小声で作戦を練る。
 
「……じゃあ、俺が先制で、特大の砲撃魔法を開始前にブッ放すから、その隙にお前が全力でボコれ。
 
 目潰しとか、噛み付きも許す」
 
「……お前が許しても意味無いやろが。
 
 ま、相手がそんなに強いんなら、俺も本気で征くか」
 
「──兄貴、頼んます」
 
「どこのどいつだぁ? その命知らずなガキはよ」
 
 トサカの声に導かれ現れたのは、スキンヘッドの巨漢バルガス。
 
 ヘカテスの街でネギに瞬殺された男だ。……が、ネギ達は彼の顔を覚えていなかった。
 
 対するバルガスの方は、もうシッカリとネギと小太郎の顔を覚えており、恐怖に竦み怯える始末。
 
 彼と対峙するネギと小太郎は、トサカの前説を信じているので、手加減するつもりは毛頭無く、それぞれ気と魔力を全開にしている。
 
 イヤイヤと頭を振りながら必死に対戦を拒むバルガス。
 
 しかし無情にも開始の合図が鳴らされる前に、ネギ得意の砲撃魔法が彼らに向けて放たれた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 フェイト達の強襲を受け破壊されながらも、完全に閉じきる前にゲートポートを使い魔法世界に転移してきた者達がいた。
 
 ドネットの要請の元、魔法世界にやって来たのは一組の男女。
 
 一人は加え煙草の男、高畑・T・タカミチ。
 
 一人は陰陽師、天ヶ崎・千草。 
 
 タカミチは余裕の表情で、千草はうんざりした表情で、それぞれがそれぞれの思惑の元、動き始める。
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