香霖堂繁盛記
 
書いた人:U16
 
第62話 道具への愛情と躾け(番外編)
 
 幻想郷と呼ばれる閉鎖された世界がある。
 
 この世界とは見えない壁一枚を隔てた所にある異世界。
 
 そこでは、人間だけでなく妖精や幽霊、吸血鬼に妖怪、更には宇宙人や死神、閻魔様に神様までもが存在していた。
 
 その幻想郷の魔法の森と呼ばれる湿度の高い原生林の入り口に、ポツンと建てられた一件の道具屋。
 
 掲げられている看板には香霖堂の文字。
 
 店の中に入りきらないのか? 店の外にも様々な商品が乱雑に積み重ねられている。
 
 ここ香霖堂は、幻想郷で唯一、外の世界の道具も、妖怪の道具も、冥界の道具も、魔法の道具も扱っている店であるが、外の世界の道具に関しては誰にも使い方が分からないため余り売れていないらしい。
 
 というか、僅かに使用方法の分かった外の世界の道具は、全て店主である森近・霖之助が自分のコレクションに加えてしまうので、商売としては成り立っていない。
 
 まあ、そんな感じで、ここ香霖堂は今日ものんびりと適当に商売していた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 夜。……時刻は丑三つ時を過ぎ、ここ香霖堂でも誰もが寝静まっている時間帯。
 
 風呂場に行灯を持った人影があった。
 
 この店の店主、森近・霖之助の所有物となった傘の付喪神、多々良・小傘だ。
 
 行灯の灯りに照らされる彼女の姿は、上半身はブラウスとベストを着用しているにも関わらず、下半身にも何も身につけていないという風変わりな恰好だ。
 
 彼女は手桶に湯船の残り湯を汲むと、それを洗い場の床に置き、予め地下工房から持ち出してきたガラス製の大きな注射器のような道具。――浣腸器にぬるま湯を吸い上げる。
 
「…………」
 
 お湯を満たした浣腸器を見つめると、小傘は僅かに喉を鳴らして生唾を呑み込み、
 
「ん……」
 
 小振りな尻を上げ、浣腸器の先端を自らの尻穴に突き立てた。
 
「ヒィん!?」
 
 ガラスの冷たい感触に、小さな悲鳴を挙げる小傘だが、数度深呼吸して自らを落ち着かせると、ゆっくりと浣腸器のピストンを押し込み始める。
 
「ん……、はぁ……」
 
 僅かに艶の混じった溜息を吐き出しながら、ぬるま湯を腸内に流し込んでいき、やがて5分ほどの時間を掛けてピストンを押し切った。
 
「ハァハァ……、ん!?」
 
 空になった浣腸器を引き抜き、再度中身をぬるま湯で満たすと、再び先端を菊穴に押し当てお湯を注ぎ始める。
 
「はぁ……、はぁ……」
 
 苦しそうな息を吐きながらも、合計で1リットルものお湯を腸内に注入しきった小傘は、余りの苦痛に全身に冷や汗を浮かべ、歯をカタカタと噛み鳴らしながらも、肛門に突き刺さったままの浣腸器を抜き取り、腸内に満たされたお湯が漏れないよう、素早く己の指を栓の代わりに突き立てた。
 
「は……、は……、は……。……苦しいけど、……我慢……、しない……、と」
 
 現在、小傘が行っているのは、薬液を注入された際に耐える為の自主練習だ。
 
 1リットルの薬液を零さず肛門から吸収出来るようになれば、また霖之助に褒めて貰えると考えた小傘は、それを実行する為にこうして練習しているのであるが……、
 
「ん……、は……」
 
 少しでも苦しみを紛らわせる為か、肛門に差し入れた指を前後に動かしていく。
 
「ん、ん……ッ」
 
 ……や、……やぁ、……こ、これぇ、気持ち良い……。
 
 尻穴に刺さる指の数はやがて二本に増え、前後させる動きに捻りが加わり、速度も激しさを増す。
 
「あ、あぁ……」
 
 恍惚とした表情で、アナルオナニーに酔い痴れる小傘の指は、肛門から漏れるぬるま湯と腸液のカクテルでぬめり輝いている。
 
 だが、それだけでは満足出来ないのか、彼女の空いていた左手は己の秘処に伸びていく。
 
「こ、こっちも……」
 
 秘裂をまさぐると、そこは既に愛蜜が溢れていた。
 
 それを指ですくい取り肉芽に塗りつけ包皮の上から刺激する。
 
「や……、ンうっ!?」
 
 本来ならば、硬く尖ってきた乳首も弄りたいのだが、手の数が足りない。
 
 仕方無く小傘は秘処と肛門に沈めた指を動かすのに専念する事にし、その10分後……、
 
「やッ、はッ……、も、もう……、駄目……ッ!?」
 
 悲鳴にも近い嬌声を挙げながら、腸内に溜まっていたお湯と膀胱に溜まっていた小水を勢いよく吐き出し小傘は達した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 洗い場に横たわり、荒い息を吐きながら、呼吸を整えようとする小傘の顔に影が差す。
 
 何か? と思い、視線を上げてみると、そこにはこの家の主である霖之助の姿があった。
 
「まったく……、夜中にくぐもった声が聞こえてきたから何事かと思って来てみれば……」
 
 呆れたような口調で告げる霖之助。
 
 対する小傘は余りの恥ずかしさに萎縮し、慌てて何も身につけていない下半身を手で隠そうとするも、それよりも早く霖之助の手が彼女の腕を掴んだ。
 
「どうやら僕は、君に対する印象を少し改める必要があるようだね」
 
 腕を引き上げて強引に立たせると、小傘の手を引いたまま地下の工房へと降りていく。
 
 そこで小傘を作業台の上に座らせると、霖之助は彼女の前に立ち、
 
「さて……、始めに確認しておくが、君は僕の何だい?」
 
 見下ろされる視線に、小傘は萎縮しながら、オドオドした態度で、
 
「ど、道具……、です……」
 
 彼女が萎縮しているのは、霖之助に失望され、捨てられる事を恐怖するからだ。
 
「お、お願い。……何でもするから、い、いえ! 何でもします! 何でも言う事聞きますから、どうか捨てないでください!」
 
 目尻に涙を溜めながら、懇願する小傘に対し、霖之助は平然とした態度で、
 
「それは無いから、安心すると良い」
 
 言って霖之助は髪を掻き上げ、
 
「僕が気にしているのは、君の淫乱なところだ」
 
 曰く、小傘の所有者として、我慢の出来なくなった彼女が、他の妖怪や人里の人間を相手に盛るのではないかと心配しているとの事。
 
「そうなった場合、香霖堂謹製の道具全てが助平なのでは? という不名誉な噂が立ちかねないからね」
 
「そ、そんな……」
 
 小傘にしてみれば、主人である霖之助以外に身体を許すつもりは微塵も無い。
 
 抗議の声を挙げようとする小傘だが、彼女が口を開くよりも早く、霖之助が口を開いた。
 
「そこで、君が欲求不満にならないよう、僕が君の相手を務めようと思うんだが……。
 
 その事について、何か不満はあるかい?」
 
 霖之助としても、数日を共に生活してきて、彼女が自分に好意を寄せてくれている事には気付いている。
 
 もし、断られたら、無縁塚で拾ってきたバイブレーターなる女性の一人遊び用の道具を与えるつもりだったのだが、
 
「ご主人様が……」
 
 生唾を呑み込み、一瞬だけ霖之助の下半身へと視線を移すと頬を紅潮させ、
 
「ぜ、是非ともお願いします」
 
 小傘の返事を受け、霖之助も頷き返すものの、棚から手の平大の筒状の道具を取り出してそれを彼女に手渡し、
 
「いいかい? まず始めに言っておくが、僕は君の事を、あくまでも道具としてしか見ていない」
 
 道具と性交渉を持つのは、ハッキリ言って人として異常だ。
 
 霖之助自身、道具は好きだし、愛情も注いでいるが、恋愛感情や性欲とは無縁の物である。
 
「そこで、その道具だ」
 
「……これ?」
 
「あぁ。名称はオナホール。用途は男性が手淫の時に用いる道具。
 
 これから僕は、君にオナホールとしての要素も加えていこうと思う」
 
 オナホールならば、道具と性交してもなんらおかしくないからだ。という、こじつけに等しい理論武装を果たした霖之助。
 
 だが、小傘とて少女。そういう関係になる以上、やはり道具としてではなく恋人として付き合っていきたいと思う。
 
 その事を思い切って尋ねてみると、
 
「それはない」
 
 即座に断言された。
 
「別に君に限った話しでも無いんだが、僕は今までの経験から誰かと恋愛関係になる事も結婚して夫婦となる事も拒むようにしている。
 
 もし、君があくまでもそのような関係を望むというのであれば、この話は無かった事にして、別の方法を採用しようと思っているんだが」
 
 極力、感情を込めないように淡々と告げる霖之助を前にして、小傘は彼がこの話しには余り突っ込んで欲しくないと思っている事を感じ、自ら退くことにした。
 
「分かったわ。――なら、せめて道具として愛して……」
 
 いつか、その理由を話して欲しいと思いつつも、譲歩する小傘。
 
 対する霖之助は小さく頷き返すと、小傘の手を取り、後ろ手に革製の手枷で拘束する。
 
「え? ……ちょっと!?」
 
「あぁ、気にしなくて良い。君の性癖は理解しているつもりだ」
 
 一人、納得した様子で頷く霖之助は、そのまま懐から黒い布を取り出して小傘に目隠しを施し、更にはボールギャグで猿轡を噛ませた。
 
「むぐッ!?」
 
 抗議の声を挙げようとする小傘だが、ボールギャグが邪魔をして意味ある言葉を発する事が出来ない。
 
 それをどう解釈したのか、霖之助はしたり顔で頷き、
 
「霊夢達から聞いて、君の性癖は分かっている」
 
 霊夢はさでずむと言っていたが、話を聞く所、真逆だ。
 
「……君はマゾヒズムと呼ばれる被虐性淫乱症なのだろう。
 
 なら、安心すると良い。僕はサディズムの知識も持っているし、香霖堂にはその行為をより楽しむ為の様々な道具もある」
 
 正直な所、少女達の教育上よろしくないと思って封印したものの、実際に使用し、どのような効果を与える道具なのか少なからず興味があったのだ。
 
「じゃあまずは、これから試してみようか」
 
 そう言われても、目隠しをされた小傘には見えない。
 
 現在、霖之助の手の内にある道具は、ゴム製簡易ポンプが付いた吸着式のローターだ。
 
 これは主に乳首やクリトリスといった突起部に吸引し、吸い付きながら直接振動を与えるという、通常のローターなどとは比べものにならない快楽を与える上級者用アイテムである。
 
 密かな試行錯誤の末、おおよその使用方法を理解している霖之助は、まず下準備として小傘に股間に顔を埋め、舌先で彼女の肉芽を愛撫し始めた。
 
「ひぃン!?」
 
 既に一度達している為、僅かな刺激を与えるだけで、包皮から肉芽が顔を覗かせ始めた。
 
 舌先で転がしつつ、吸い付くようにして刺激を与え続け、クリトリスを更に大きく勃起させる。
 
「んぐッ!? むぐぐ!」
 
 丹念に愛撫しつつ舌だけでクリトリスの包皮を捲り上げ、ピンク色の肉豆を甘噛み。
 
「ヒィう!?」
 
 途端、小傘は大きく背を仰け反らせて絶頂に達した。
 
 口の周りに付着した小傘の愛液を舐めながら、霖之助は嗜虐的な笑みを浮かべて、
 
「なるほど、なかなかに感度は良いようだ」
 
 言って、剥き出しの肉芽に吸着式のローターを装着する。
 
 クリトリス全体を締め付けるような感触に、小傘は一度大きく身体を震えさせると、腰を振って必死に取り除こうとする。……が、真空状態で吸着したローターはそんな事で取れるような代物ではない。むしろ、道具が大きく揺れてクリトリスに刺激を与えるだけだ。
 
 それが更に小傘を追い詰めるのだが、彼女の地獄はまだまだ終わらない。
 
「さて……、どんな反応を見せてくれるのか……」
 
 興味深げに呟き、霖之助がローターのスイッチを入れる。
 
 強さは、いきなり最強。
 
 神経を剥き出しにしたクリトリスに直接与えられる振動に、小傘は十秒と保たずに再度の絶頂を味わった。……が、相手は感情も思考も無い道具。
 
 彼女が絶頂を迎えたとしても、ローターが停まる気配は無い。
 
「ふぐ――ッ!? ほって!? ほれ、らめぇ――ッ!?」
 
 霖之助に取って貰おうと必死に声を挙げるが、猿轡の所為で何と言っているか霖之助に正確な所は伝わらない。
 
 なので、霖之助は彼女の抗議を都合良く解釈する事にした。
 
「ふむ……、掘って。か」
 
 一人納得したように頷き、暴れる小傘の身体を押さえつけて強引に俯せの体勢にすると、その尻を持ち上げ、
 
「掘るというのは……」
 
 言って、小傘の肛門に二本の指を差し込む。
 
「ひぃぎィ!?」
 
「やはり、こちらの穴の事を言うんだろうか?」
 
 指を前後させるだけではなく、捻ったり折り曲げたりと小傘の肛門を適度に弄った霖之助は、棚から新たな道具を取り出してきた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 霖之助が持ってきた道具は、直径5p程の濃緑色のデコボコした球だ。
 
 数は13。
 
 上半分と下半分を反転させると、それがスイッチになっているのか、球は振動を開始する。
 
 具合を確かめた霖之助は、球にローションを塗すと、小傘の尻穴に押し当て、
 
「まず、一つ……」
 
「むぐぅ!?」
 
 強引に押し込んだ。
 
 既に解されていた小傘の肛門は、僅かな抵抗を示すもののそれほど苦もなく球を飲み込んでしまう。
 
「ふむ……。この様子だと、意外と全部いけそうだね」
 
 言って二つ目を挿入。
 
 幾度かの薬液浣腸や、自主的なアナルオナニーにより、僅かな余裕があった小傘だが、彼女の余裕は、そこまでだった。
 
 二つ目の球が、直腸内で一つ目の球とぶつかり合い、小刻みな振動だけでなく、ガチガチとした衝撃を伴い始める。……しかも完全な球体ではなく、凹凸があるため衝撃は不規則な方向性を持って小傘の腸内を刺激する。
 
 流石に、それには堪らず、霖之助に向け必死に止めてくれるよう懇願するが、彼は一切の聞く耳を持たず、三つ、四つと新たな球を挿入していく。
 
 そして、迎えた七つ目にして漸く彼の手が止まった。
 
 否、彼の手が止まったというよりは、球がそれ以上入らなくなったと言うべきか。
 
 八つ目を肛門に押し当て、強引にねじ込もうとするが、既に満員なのか小傘が悲鳴を挙げるだけで、それ以上侵入していく様子は無い。
 
 若干、残念そうな溜息を零しながらも、霖之助は小傘の尻を軽く叩き、
 
「さて……この道具、取り出すには君が自力で放り出すしかないんだが、なかなか面白い素材で出来ていてね。
 
 水分を吸収すると膨張し、振動が大きくなる」
 
 霖之助の言っている意味が理解出来たのか、小傘の身体がビクリと震える。
 
「つまり、早く取り出さないと、腸内から取れなくなってしまうというわけなんだが……」
 
 口元を歪めてニヤリと笑い、
 
「君が何処まで頑張れるか、見せてもらおうか?」
 
 言って懐からリモコンを取り出し、振動の強さをMaxに。
 
「――――ッ!?」
 
 悲鳴を挙げる余裕すらなく、股間から盛大に失禁して小傘は意識を失った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「う……、ん」
 
 次に小傘が意識を取り戻した時、彼女は全ての衣服を脱がされ、猿轡と目隠しを外された状態で木製の椅子に座らされていた。
 
 勿論、ただ座らされているだけではなく、両腕は肘掛けに、両足は椅子の脚にロープでシッカリと固定されている。
 
 頑丈な素材で出来ているであろう、その椅子は、小傘が多少身動ぎした程度では微動だにしない。
 
 幸いにもクリトリスと肛門に入れられたローターは全て取り除かれているので、こうして座っている分には何の問題も無い。……とはいえ、このままでは埒があかないと判断した小傘が、どうしたものか? と考えていると、地下工房の扉が開き、霖之助が水差しを片手に姿を現した。
 
「やぁ、目が覚めたようだね」
 
「は、はい」
 
 靴音を響かせながら小傘に歩み寄り、グラスに水を注ぐと、
 
「喉は渇いていないかい? 脱水症状になっているといけないから、水を持って来たんだが」
 
 妖怪が脱水症状になるのかは疑問だが、体調を崩されても困る。
 
 叫びすぎで喉の渇きを覚えていた小傘は、即座に了承し、霖之助の手ずから水を飲まさせてもらった。
 
 水を飲み終え、一息を吐いた小傘に霖之助は頭を下げ、
 
「すまなかったね。最初の調教にしては、少し激しすぎたようだ」
 
 と、謝罪する。
 
「い、いえ……。私はご主人様の道具ですから、好きに扱ってもらって結構です……」
 
 本音としては、もっと優しく愛でて欲しいのだが、自分の事を道具としてしか見ていない霖之助にそれを求める事は出来ない。
 
 だから彼女は、道具として霖之助に満足してもらう為、己を殺し道具として振る舞おうと努力する。
 
 対する霖之助は、懐から三つのローターを取り出し、
 
「今度は、それほど厳しくないと思うから、安心してくれていい」
 
 言って、小傘の両の乳首とクリトリスの包皮の上にローターをテープで貼り付け、スイッチをON。
 
 但し、振動の強さは微弱だ。
 
 そのままスイッチを粘着テープで小傘の身体に貼り付ける。
 
 くすぐったいようなもどかしいような感覚が乳首とクリトリスを刺激するが、振動が弱い為、耐えられない程ではない。
 
「さて……、じゃあ僕は店があるから暫く留守にさせてもらうよ」
 
 言って、小傘の返事も待たずに彼女の口に猿轡を噛ませると、そのまま地下工房を後にした。
 
 ――残された小傘は、やることも無い……というか、両手足を拘束されていて何も出来ないので目を閉じて休もうとしたのだが、胸と淫核を刺激するローターが違和感となって眠る事が出来ない。
 
 それどころか、一度意識してしまうと、ローターの弱い刺激がもどかしく思ってしまう。
 
 もっと振動が強ければイク事も出来ただろう。もっと振動が弱ければ気にせず眠る事が出来ただろう。そんなもどかしい感情と感覚を抱えたまま、小傘は霖之助が再度工房を訪れるまでの間を堪え忍ばねばならなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ハァ……、ハァ……、ハァ……」
 
「おや? 随分と苦しそうだね?」
 
 半日以上経ってようやく地下工房に姿を現した霖之助は、椅子に固定されたままの状態で荒い息を吐く小傘を見て唇の端を僅かに吊り上げる嗜虐的な笑みを浮かべながら彼女のの元に近づき、コミニケーションを遮っている猿轡を外してやる。
 
「あ……、あぁ……」
 
 猿轡によって口内に溜まっていた唾液が堰を切ったように小傘自身の胸元を汚すが、彼女にそれを気にしているだけの余力は残されていない。
 
 だが、霖之助はそれ以上、彼女の身体に触れようともしないし、拘束を解いてやる素振りも見せない。
 
 ただ、小傘の眼前に立ち、彼女の姿を見下ろしているだけだ。
 
「あ、あの……ッ!?」
 
 やがて我慢の出来なくなった小傘の方が、思い切って口を開いた。
 
「ん? 何かな?」
 
「い、……イカせてください」
 
 半日以上にも続く微弱な責めで、彼女はイケないままに身体を高ぶらせた状態で今を迎えている。
 
 一番の方法は、霖之助の手により絶頂を迎えさせられる事だ。……これならばまだ、彼の手によって無理矢理に、という自己弁護が成り立つ。
 
 時点としては、拘束を解いてもらった上で、自身の手によって慰めるというものだが、これでは霖之助の前で自慰を披露しなくてはならない上に、彼から言葉責めを受ける事になるだろう。
 
 これまで、霖之助に様々な痴態を見られてきたとはいえ、小傘はいまだ処女。
 
 自ら好き好んで、自慰を見られたいとは思わない。その為、苦渋の選択をしたのだが、この場においては、彼女より霖之助の方が更に上手だった。
 
「ふむ……」
 
 霖之助は小さく頷くと、小傘の様子を観察し、まるでおもらしでもしたように足下に愛液の水溜まりを作る少女を見つめると、一歩進んで小傘の顎に手を添え、恥ずかしさに俯いてしまっている彼女の顔を強引に上げさせ、
 
「さて、良い機会だから確認しておこうか」
 
 一息、
 
「僕は、君の何だい?」
 
「ご、ご主人様です……」
 
 霖之助の出す質問の意図が分からず、恐る恐る答える小傘だが、この解答に満足したのか霖之助は小さく頷き、次の質問を投げ掛ける。
 
「では、君は僕の何だい?」
 
「あの……」
 
 自分を見つめ続ける霖之助の視線から目を逸らす事も出来ず、小傘は意を決して言葉を放った。
 
「ど、道具……、です……」
 
 本来ならば、別の答えを放ちたかったが、彼女を見つめる霖之助の視線がそれを許さない。
 
 だが、その解答に満足していないのか、霖之助は不機嫌な表情で、
 
「そう……、僕は君の主人で、君は僕の道具だ。
 
 だというのに、君はそれを忘れ、僕に命令しようという。
 
 ――実に悲しい事だ。」
 
「そ、そんな!?」
 
 小傘にしてみれば、そんなつもりは毛頭無い。……勿論、霖之助としてもその事は分かっているが、お互いの立場を明確にした上で今後の調教を行う為にも、一度ハッキリさせておいた方が良いだろうという考えだ。
 
「とはいえ……」
 
「ひぃあ!?」
 
 霖之助の伸ばした指が、小傘の秘処に入り込む。
 
 浅く入っただけなのに、既に昂ぶっている小傘の身体は敏感に反応を示した。
 
「これだけ濡らしていて、まだイッてないというのは、辛いだろうからね。少しゲームをしようか」
 
 小傘の愛液で濡れた指をこれ見よがしに見せつけた霖之助は、指に付着した愛液を小傘の頬に塗りつけるようにすると懐から小さな道具を取り出した。
 
 次はどんな道具で責められるのか、と期待と不安の入り交じった表情でそれを見つめる小傘だが、彼女の予想に反し、霖之助が取り出したのは何の変哲もないただの砂時計だった。
 
「あの……、それって……」
 
「これ自体はただの砂時計だ」
 
 言って己の腰帯を解き、イチモツをさらけ出す。
 
「ヒッ!?」
 
 初めて見る男根に、小さく悲鳴を挙げる小傘。
 
 対する霖之助は気にした様子もなく、砂時計を手に取り、
 
「じゃあ、ゲームのルールを説明しようか。
 
 砂時計の砂が落ちきる前に、君が口だけで僕を射精させる事が出来たなら君の勝ち。
 
 その時は、君の望み通りローターの振動を強めてイカせてあげよう」
 
 但し、
 
「時間内に僕を絶頂させる事が出来なければ、その時はそれ相応のお仕置きを受けてもらう」
 
「お、お仕置き……」
 
 どんな事をされるというのか? まだ自分が見た事も無いような道具で蹂躙されるのか、それを想像しただけで、小傘の意思とは関係無く、彼女の秘処からは更に愛蜜が溢れてくる。
 
 だが、霖之助のお仕置きというのが、また放置されるだけのものだったなら? ……これ以上、この地獄が続けば、如何に小傘が妖怪であろうと精神に異常を来すかもしれない。
 
 そんな彼女の葛藤を知ってか知らずか、霖之助は有無を言わせないまま、ゲームのスタートを宣言した。
 
「じゃあ、スタートだ」
 
 と言われても、口でどのようにすれば良いのか小傘としては何の知識も無い。
 
 仕方無く、舌で霖之助のペニスを舐めるのだが、知識も経験も伴わない舌技などでは勃起させる事すらままならない。
 
「ん……、はむ、うむぅ……、ハァハァ……」
 
 懸命に霖之助の息子に舌を這わせるものの、無情にも時間だけが過ぎていく。
 
 時間制限さえなければ、小傘の拙い舌技であろうとも霖之助を絶頂に導く事が出来たかもしれないが、元より今回は霖之助が小傘にお仕置きを行う為に仕組んだ事。
 
 どう足掻いた所で、小傘に勝ち目などある筈も無く、全ての砂は無慈悲にも落ちきった。
 
「どうやら駄目だったようだね」
 
 小傘から一歩遠のき、彼女の舌の射程範囲の外に出た霖之助が彼女に敗北を言い渡す。
 
 イチモツを仕舞い、ズボンを引き上げると、霖之助は工房の隣にある倉庫へと姿を消し、5分程して大きな台座を押しながら、再び姿を現した。
 
 彼の持って来た台座は、三角柱を横に寝かせた形状の物で、名称を三角木馬という。
 
「元々は、拷問用の道具だったらしいんだがね。今では、SMプレイなどでも使用されているらしい」
 
 小傘を椅子から解放するも、すぐに後ろ手に縛り上げ、そのまま彼女の身体を抱えて三角木馬の上に降ろす。
 
「ぎぃ……ッ!?」
 
 三角木馬の頂点が股間に食い込み、声にならない悲鳴を挙げる小傘だが、そんな彼女の苦痛など知った事ではないと、霖之助は小傘の両足に重りを括り付ける。
 
「いぎぃ!! お、お願い! 止めて!? もう許して!!」
 
「そう簡単に許してしまっては、お仕置きにならないだろう? ……それに」
 
 霖之助が新たに取り出したのは、細い紐によって数珠繋ぎにされた洗濯ばさみの束だ。
 
 洗濯ばさみと一言で言っても、幻想郷で普及している竹を加工した物ではなく、外の世界から入ってきたプラスチックと金属製のバネで構成された物。
 
 それを手で弄びながら、最初の一つを小傘の左の乳首に挟み、
 
「ギィッ!?」
 
「お仕置きの本番はこれからだよ」
 
 言って、二つ目を左の乳房に、三つ目を右の乳房、四つ目を右の乳首。
 
 その後は腹部に三つを挟んで下腹部へ至り、最後の一つは散々刺激され未だ勃起したままの淫核に取り付けられた。
 
「い、痛い……ッ! 取って! 外してください!!」
 
 苦悶の声を挙げる小傘に対し、霖之助は口元を邪悪に歪めると、
 
「では取ってあげよう」
 
 告げ、紐を引っ張り彼女の身体に挟み付けた全ての洗濯ばさみを一気に引き剥がした。
 
「ぎぃいい!?」
 
 先程までとは比べものにならない激痛に悲鳴を挙げ身体を大きく跳ねさせる。
 
 当然、そんな行動を三角木馬の上でとれば、股間に更なる激痛を加える事になり、結果……、小傘は本日三度目の失禁を霖之助に披露した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 三角木馬の上でぐったりする小傘を見やって溜息を吐き出す霖之助。
 
「……少し、やり過ぎたかな?」
 
 初心者を相手に、少しハード過ぎたかと反省。
 
 取り敢えず、小傘の拘束を解いて作業台の上に寝かせ、小水と愛液で汚れた彼女の下半身を綺麗に拭ってやる。
 
「さて、と……」
 
 今日の所はこのくらいで良いだろうが、翌日の為の仕込みをしておく必要があるだろう。
 
 ……というか、このままだと僕の欲求不満の方が溜まりそうだ。
 
 下腹部に感じる疼きを意識しながら思考する。
 
 とはいえ、自分でやって満足するのではなく、敢えて小傘が成長するまで我慢する。というのが霖之助が自分に課した試練だ。
 
 ……一方的に彼女にだけ課題を与えるのはフェアじゃないからね。……とはいえ、今の状態では何時になる事やら。
 
 ウンザリ気な溜息を吐き出し、霖之助は革製のショーツと小型の南京錠を引っ張り出すと慎重な手付きでそれを装着させた。
 
「うん……」
 
 それから暫くして小傘が意識を取り戻し、己の下半身に違和感を感じて視線を降ろすと、そこにはしっかりと錠のされた貞操帯が填められていた。
 
 腹の違和感からして、肛門と膣双方に何かしらの器具を入れ込まれているだろう事は想像に難しくない。
 
「あ、あの……、これ……」
 
 恐る恐る問い掛ける小傘に向け、霖之助は冷静な声色で、
 
「あぁ、鍵は僕が持っている。外してほしければ、三分以内に口だけで僕を絶頂まで導けるようになる事だ。
 
 それまでの間は――」
 
 手元のリモコンのスイッチを入れる。
 
「ヒィあ!?」
 
 突如、股間と直腸に微細な振動が加えられ、身体を仰け反らせる小傘。
 
「その状態で一日を過ごしてもらう。チャンスは一日一度だけだ。
 
 ――勿論、僕を満足させられなかった場合、それ相応のお仕置きを与えるから覚悟しておくように」
 
 じゃあ、頑張ってくれ。と言い残し、小傘に服を手渡すと地下工房を後にする霖之助。
 
 それを見送った小傘は、自分の股間を覆う革ショーツにそっと触れ、そこに僅かな湿り気を確認すると、今日のお仕置きを思い出し僅かに身震いし、
 
 ……あんな、お仕置きがこれからもずっと――。
 
 恍惚とした笑みを浮かべて、乳房やお腹に残る洗濯ばさみの跡に指を這わせた。
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