香霖堂繁盛記
 
書いた人:U16
 
第58話 傘の改良(番外編)
 
 幻想郷と呼ばれる閉鎖された世界がある。
 
 この世界とは見えない壁一枚を隔てた所にある異世界。
 
 そこでは、人間だけでなく妖精や幽霊、吸血鬼に妖怪、更には宇宙人や死神、閻魔様に神様までもが存在していた。
 
 その幻想郷の魔法の森と呼ばれる湿度の高い原生林の入り口に、ポツンと建てられた一件の道具屋。
 
 掲げられている看板には香霖堂の文字。
 
 店の中に入りきらないのか? 店の外にも様々な商品が乱雑に積み重ねられている。
 
 ここ香霖堂は、幻想郷で唯一、外の世界の道具も、妖怪の道具も、冥界の道具も、魔法の道具も扱っている店であるが、外の世界の道具に関しては誰にも使い方が分からないため余り売れていないらしい。
 
 というか、僅かに使用方法の分かった外の世界の道具は、全て店主である森近・霖之助が自分のコレクションに加えてしまうので、商売としては成り立っていない。
 
 まあ、そんな感じで、ここ香霖堂は今日ものんびりと適当に商売していた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 小傘を引き取る事になった霖之助は、早速、彼女を改造する事にした。
 
 霖之助に案内されて小傘が連れて来られた場所は、霊夢や魔理沙でさえ知らない香霖堂の地下工房。
 
 そこでは鍛冶仕事なども行うのか、石炭のくべられた炉や地下水を汲み上げる為の手漕ぎ式ポンプ。
 
 壁際の棚には、様々な薬品類や一見しただけでは何の為に使うのか分からないような奇妙な形状の道具が所狭しと並べられていた。
 
 彼曰く、傘のデザインはそのままに、骨子と傘布部分の強化を行い、雨だけではなく紫外線や弾幕さえも防げるように改造するのだという。
 
 それを聞いた小傘は歓喜した。
 
 雑魚妖怪と小馬鹿にされ続けてきた自分だが、その改造を受ければ傘としてだけではなく、盾としても彼の役に立つ事が出来るのだと。
 
 主人であり、恩人であり、使用者でもある霖之助に報いる為ならば、なんでもしようと決意を新たにする小傘を前に、霖之助は棚から幾つかの薬品を取り出すと、備え付けの椅子に腰を下ろし、頑丈そうな造りのテーブルの上に置いてあった秤を使って正確に分量を量り調合する。
 
 15分ほど掛けて練り合わせ、完成した薬品は、粘性の高いドロリとした白濁液だった。
 
「あの……、霖之助さん。それは?」
 
 恐る恐る問い掛ける小傘に対し、霖之助は自信に満ちあふれた表情で、
 
「あぁ、紫外線や弾幕を防ぐ為の、……言ってみれば日焼け止めと防弾塗料と糊を兼ね合わせた薬品だ。
 
 有害な物は一切混入されてないから、安心すると良い」
 
 それを聞いて安堵の吐息を吐き出す小傘だったが、続く言葉で再度表情を固くした。
 
「それじゃあ、服を脱いでもらおうか」
 
「……え?」
 
 困惑の表情で問い返す小傘に対し、霖之助は何故彼女が戸惑っているのかに気付き、真剣な表情で、
 
「別にやましい事をするわけじゃないから安心してくれ」
 
 最初に断りを入れてから作業について説明を始める。
 
「まず、僕が見た所、君の本体は傘の方ではなく、そちらの少女側のようだ。
 
 だから改造する場合は、本体の方を細工しないと本質的な意味での改造にはならない」
 
 そう告げる霖之助の目に下心は微塵も感じられない。
 
「わ、分かりました……」
 
 大恩ある霖之助の為だ。裸を見られる程度の羞恥は我慢出来る。
 
 ……それに、今の私は霖之助さんの所有物ですし。
 
 彼とて、下心があって言っているわけでも無い。それどころか、自分を強化する為に言ってくれているのだ。
 
 その事が分かるが故に、小傘に拒絶という選択はありえない。
 
「ぬ、脱ぎます!」
 
 意を決して宣言し、まずはベストをはだける。
 
 ブラウス、下駄、スカートと脱いでいき、
 
「あ、あの……、下着も?」
 
「当然だろう」
 
 本当に、当たり前のように答える霖之助。
 
 むしろ、こんな恰好をしているというのにも関わらず、何の反応も示してくれない事に少しショックを受けつつも、シュミーズとドロワーズを脱ぎ、一糸纏わぬ姿を霖之助の前に晒した。
 
 ……は、恥ずかしい。
 
 羞恥から、首筋まで真っ赤になっている小傘に対し、霖之助は部屋の中央付近に据えてある大きな作業台を指し、
 
「その上に俯せで寝転がってもらえるかい」
 
「は、はい……」
 
 言われるままに俯せになる小傘。
 
 その白くなだらかな背中に、霖之助は何の前置きも無く薬液を付けた刷毛を走らせた。
 
「ひゃう!?」
 
「くすぐったかったかい? 少しの間は、我慢してくれ」
 
「は、はいぃ」
 
 刷毛が背中から肩へ、そして首筋から腕へ。その後は、腋を経て脇腹、腰、尻、太股、ふくらはぎへと続く。
 
 くすぐったいだけではなく、薬液の持つ滑りのある感触に背筋を粟立たせるが、小傘は必死に堪える。
 
 一通り塗り終わった為、安堵の吐息を吐き出す小傘だが、霖之助は彼女に暫く動かないでくれ。と言いつけ、自分は薬液の入った器を机に置くと、無縁塚で拾った薄手のゴム手袋を両手に装着。
 
 小傘の右腕を手に取ると、まるでマッサージでもするように丹念に薬液を彼女の身体に塗り込み始めた。
 
 表面だけでなく、関節部分や指の一本一本に至るまで、丁寧に丁寧に塗り込んでいく。
 
「ん……」
 
 ぬちゃぬちゃと薬液が滑った音を発て、傘の改良を行っているだけの筈なのに、小傘の精神を高揚させ、淫猥な気分にしてみせる。
 
 確かに、やっている事は小傘の身体に薬液を塗り込んでいるだけなのだが、端から見るとローションマッサージにしか見えない。
 
 また薬液自体が、白濁している事もあり、とても淫靡な雰囲気を醸し出していた。
 
 小一時間ほど掛けて、背中と四肢に薬液を塗り込み終えた霖之助は一息を吐き、続いて尻たぶに薬液を塗る作業に移る。
 
「んふぅ……」
 
 最初は優しく撫でるように、時には強く握り潰さんが如く。
 
 まるで愛撫のような動きに、小さく反応を示す小傘だが、霖之助の手指が尻たぶを開き肛門の周囲を揉みほぐすようになって初めて拒否を示した。
 
「そ、そこは!?」
 
 動揺する小傘を無視して、霖之助の指は彼女の汚穴へと突き刺さる。
 
「ヒィうッ!?」
 
 薬液がローションの代わりとなって、一気に第二関節までを飲み込んだ。
 
「や、やめ……」
 
 小傘の弱々しい抗議を聞き流し、霖之助の指は彼女の肛門を蹂躙するかのように前後し、直腸の中で指を曲げて腸壁を引っ掻くなどの行為を繰り返していく。
 
 全身から見れば僅か指一本の違和感に過ぎないにも関わらず、それでも小傘は身体全体を痙攣させて違和感を体現する。
 
 ……だ、駄目ぇ。これ以上されると――。
 
 不浄の穴であくめに達してしまう所を見られる恥ずかしさから、ギュッと目を閉じる小傘だが、彼女の覚悟とは裏腹に霖之助の指が肛門から引き抜かれた。
 
「ハァ……、ハァ……」
 
 僅かな物足りなさを宿した眼差しで霖之助を見つめる小傘。
 
 そんな彼女に対し、霖之助は何時もと変わらぬ平然とした態度で、
 
「さあ、今度は上を向いて寝てもらおうか」
 
 このまま尻穴を弄って犯される所まで想像していた小傘としては、彼の言葉に一瞬驚愕の表情を浮かべてしまうものの、すぐに今行われている行為が性行為ではなく、自身を強化する為の物である事。
 
 そして霖之助は、それを実行しているだけである事を思い出し、慌てて彼の言に従おうとするが、そこで今の自分の恰好を思い出して我に返った。
 
 先程までの愛撫にも似たマッサージで、小傘の乳首は固くなりクリトリスは充血して勃起し、股間も愛液を垂れ流している状況だ。
 
 そんな姿を霖之助に見られたら、どう思われるか。それを想像して仰向きになる事を躊躇う小傘だが、何時までもそうしてはいられない。
 
「さあ……」
 
「は、はい……」
 
 心臓を高鳴らせながらも寝返り、霖之助の前に再び裸体を晒す。……が、流石に恥ずかしいのか、両腕で胸と股間を隠した状態だ。
 
「手を退けてもらえないかな」
 
「いえ、その……。恥ずかしくて……」
 
 消え入りそうな程に小さな声で零す小傘に対し、霖之助は仕方無いと小傘に気付かれない程度の小さな溜息を吐き出し、以前てゐから与えられた指南書の一節を思い出してみる。
 
「恥ずかしがる必要は無い。――君は充分綺麗だよ」
 
 ともかく女性は優しく甘い声で褒めろ。そうすれば、大概の女性はこちらの言う通りに動いてくれる。というてゐの教えに従い、褒めてみた所、恐る恐るという様子ではあるが、小傘は両腕を退けてくれた。
 
 正直な所、霖之助の指摘はややズレていたものの、小傘とて少女である以上、褒められて悪い気はしない。
 
 それに今の自分の状況を見て、淫乱と思われたのならば、そのまま霖之助に初めてを捧げてしまい、名実共に彼の所有物になってしまおう。という潔い覚悟を決めた。
 
「あ、余り見ないで……」
 
 とはいえ、流石に恥ずかしいのだろう。顔を真っ赤にして懇願する小傘。
 
 対する霖之助は、このままではまた隠されかねないと思い、作業所にあったロープで小傘の両手首を絡め取るとそのまま作業台に縛り付けてしまう。
 
「あ……、やっ、何を」
 
「また隠されても厄介だと思ったから、少し拘束させてもらっただけだよ。
 
 跡が残ってしまうかもしれないから、余り暴れない方が良い。
 
 ……それに、見られるのが恥ずかしいと言うのなら」
 
 言って、手拭いを取り出し、それで小傘に目隠しを施す。
 
「これで、見られているという事すら分からないだろう」
 
 むしろ逆に、視覚を奪われた事により、他の感覚が鋭敏になるのだが、実際にそんな状況に陥った事の無い霖之助は、その事に気付かない。
 
 先程と同じように、刷毛で薬液を身体に塗っていき、それを手で塗り込んでいく。
 
 控えめな乳房は優しく労るように撫で、
 
「ん……、ふぅ――」
 
 先端にある桜色の突起は摘むように適度に刺激しながら。
 
「ひぃう!?」
 
 霖之助の手は脇腹を経由して腹部へ……、その中心にあるへこみ。――臍の中までも丹念に塗り込んでいく。
 
「あ……、あぁ――!?」
 
 下腹部にまで伸びた手は、僅かに生えた恥毛を掻き分け、その先にある小さな突起部にまで至る。
 
「あ、やッ!? そこは……!?」
 
 抗議の声が挙がるより早く、霖之助の指が包皮の上から肉芽を弄り始めた。
 
「あひぃ! だ、駄目――、やめ――ッ!?」
 
 割れ目に沿って指を往復させ、慎重な手付きで指を挿入していく。
 
「い、痛ッ!? 痛い!」
 
 覚悟を決めたとはいえ、やはり痛いものは痛い。
 
 余りにも小傘が痛がるので、仕方無く霖之助は指を引き抜いた。
 
 とはいえ、ここで止めるわけにもいかない。この作業はとても大事なのだ。
 
「いいかい小傘」
 
 そう前置きし、霖之助は語り始める。
 
「西洋の方にはジークフリートという英雄が居たそうだ」
 
 唐突に英雄譚を語り始めた霖之助に、困惑の表情を向ける小傘だが、彼女に構わず霖之助は話しを続ける。
 
「彼は悪竜を退治した際、全身にその血を浴びて不死身の身体になったと言う。
 
 ……だが、そんな彼も背中にだけ菩提樹の葉が張り付いていた所為で、その部分だけは不死身になっておらず、最後には背中を槍で刺されて死んでしまう」
 
 その教訓を活かす為にも、全身に隈無く薬液を塗りつけていかなければならないのだという。
 
 何故ならば、
 
「――僕は君に、そんな事になってほしくない」
 
「……霖之助さん」
 
 そこまで、自分の事を気に掛けてくれたのか。と、小傘は思わず感動し、改めて全てを霖之助に委ねる決意をする。
 
 小傘の髪を優しく撫でた霖之助は、その場から一旦離れ、棚から新しい薬品を持って来ると、
 
「……正直、余りこんな薬は使いたくないんだが」
 
 ドロリとした液体を一掬いし、それを小傘の股間に塗りつけていく。
 
「ん……」
 
 ヒンヤリとした感覚に、思わず声を挙げてしまう小傘。
 
 塗られた直後は、少し冷たいくらいにしか思わなかったのだが、時間が経つにつれ、徐々に下腹部に痒みにも似た疼きを感じ始めた。
 
 その疼きは徐々に激しさを増していき、3分も経つ頃には小傘の秘処からは愛蜜が滲み出し、それに堪える為、彼女は脚を閉じて内股を擦り合わせ気を紛らわせようとするも、その程度の行為では全然満足出来ない。
 
「あ、あの……、霖之助さ……」
 
「そろそろ良いかな?」
 
 小傘の言葉を聞かず、霖之助はピタリと閉じられていた彼女の脚を開き、その間に自分の身体を入れて閉じられなくすると、左手で彼女の秘処に触れゆっくりと開いてみる。
 
 途端、溢れ出してくる愛液。
 
 それを一掬いして満足げに頷き、再度右手に薬液を取ると、そこに塗り込み始める。
 
「ヒッ!? あひぃ!?」
 
 喘ぎ声を零しながら、霖之助の指に合わせるように腰を動かしていく小傘。
 
 勿論、彼女の意図した所ではなく、快感を求める上での自然な行動だ。
 
 とはいえ、充分に濡れたお陰で小傘に痛みが無くなったのも確かなので、霖之助は秘処に薬を塗りながら、もう片方の窄まりにも指を伸ばす。
 
「ヒィア!? ま、また、そ、そこ――ッ!?」
 
 シワの一本一本をなぞるように丁寧に薬を塗りつけ、ゆっくりと指を挿入していく。
 
「だ、駄目です! そこは本当に汚いから!?」
 
 同じ絶頂を迎えるにしても、不浄の穴ではなく正当な場所で、という意味からの懇願だったが、どうにも霖之助には通じなかった。
 
「なに、手袋をはめているからね。気にしなくて良いよ」
 
 そういう事を言っているのではないのだが、霖之助は気にせず肛門に薬を塗りつけるべく、指を前後させる。
 
「あ、あ、あぁ!? だ、駄目……。お尻……、ヘンに、ヘンになっちゃう――!?」
 
 秘処よりも菊穴の性感の方が強かったのか、小傘の股間からは愛液が止め処なく溢れてくる。
 
 ……もうそろそろ良いかな?
 
 と思っていた霖之助だが、ふと、一箇所塗り残しを思い出して徐に手を伸ばし、
 
「ヒッ!?」
 
 肉芽を覆う包皮を捲り上げ、剥き出しになった桜色の肉豆を擦るように摘みあげた。
 
「ヒギィ!?」
 
 途端、潮を吹いて失神する小傘。
 
 立ち位置の関係上、彼女の潮をモロに被った霖之助は濡れた上着を摘みつつ、溜息を吐き出し、
 
「ヤレヤレだ。折角、昨日洗濯したばかりだっていうのに、また洗い物が増えてしまった……」
 
 愚痴りながらも、意識を飛ばして荒い息を吐く小傘の頭を一度撫で、上着を脱いで彼女に掛けてやる。
 
「さて……、今の内に次の準備に取り掛かるとするか」
 
 次の作業は、彼女に取って更にハードな物になる。今の内に休ませておいてやるべきだろう。
 
 そう考えながら、霖之助は新たな薬品を取り出し調合し始めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「う……、ん」
 
 あれから一刻後、身動ぎし目を覚ました小傘は下半身が膝立ちの両足を開いた体勢で拘束されている事に気付いた。
 
「あ、あの……。この恰好は?」
 
 両腕は未だ拘束されて作業台に固定されたまま、いわば尻を突き出して丸見えな状態だ。
 
 既にイクところまで見られているとはいえ、この体勢は恥ずかし過ぎる。
 
「あぁ、次の作業は暴れられると少々危険だからね。取り敢えず、下半身も拘束させてもらったよ」
 
 そう告げる霖之助の手には巨大な注射器のような物。いわば浣腸器が握られているのだが、目隠しをされている小傘はそれに気付けない。
 
 霖之助は浣腸器に薬液を満たすと、その先端を小傘の菊門に添え、一気に押し込んだ。
 
「ヒィ!?」
 
「大丈夫。心配は要らないから、力を抜いて」
 
 そう言われても、この状況で力など抜けよう筈がない。
 
 強引に、浣腸器のピストンを押して薬液を小傘の体内に送り込む霖之助。
 
「ヒィ……ッ! な、何か入って来る!?」
 
「ただの薬だがら、心配は無い。
 
 この薬は体内で吸収されると、君を構成する骨子の強度が上がる。だから、それまでは我慢してくれ」
 
「そ、そんな!?」
 
 霖之助の持つ浣腸器の容量は500cc。既に腹がパンパンに膨れている感覚があるというのに、霖之助は最後の一滴まで押し込んだ浣腸器を引き抜くと、更に薬液を吸い上げ、もう一度、注入を開始し始めた。
 
「や!? む、無理! これ以上は絶対無理ッ! お願い、抜いて! 抜いて!?」
 
 小傘の抗議を無視して、強引にピストンを押し込む。
 
「もう少し我慢していてくれ。すぐに栓を用意して――」
 
「だ、駄目……」
 
 既に限界を超えていたのだろう。注入された薬液が小傘の尻穴から凄い勢いで噴出し始める。
 
「おっと!?」
 
 咄嗟に、それまで薬液の入っていた洗面器で受け止める霖之助。
 
「お、お願い。見ないで……、見ないでぇ……ッ」
 
 小傘は必死に肛門を閉じて排泄を止めようとするが、中々薬液の逆流は収まりをみせる気配は無い。
 
 暫く断続的に噴出を繰り返していた薬液も、五分を過ぎる頃からようやく収まりが見えてきた。
 
「う、うぅ……」
 
 極限の羞恥の為、思わず啜り泣いてしまう小傘。
 
 最も見られたくない、排泄を見られてしまったのだ。それも仕方無いだろう。
 
 不幸中の幸いというべきか、小傘は人の恐怖心を糧とする妖怪であった為、排泄物は混じっていない。
 
 とはいえ、そんな事を言っても小傘にしてみれば、何の慰めにもならないだろう。
 
 だが……、霖之助はそんな事など気にも止めず、小さく溜息を吐き出し、
 
「参ったな。……この薬液の材料は中々手に入りにくくて、今は予備が無いんだが」
 
 一応、出された薬液は殆どが洗面器に受け止める事に成功してはいる。
 
 これだけあれば効果的には問題は無いだろうが……、
 
「もう一度、注入する。……と言うのは」
 
「い、いや。嫌ッ……! それだけは、勘弁して!!」
 
 涙でグチャグチャになった目隠しを外してやり、彼女の目の前に件の薬液が満たされた洗面器を置く。
 
「尻からの注入が嫌なら、もうこれを飲んでもらうしか方法が無いんだが、それでも良いかい?」
 
 薬液はドロリとした濁った茶色の液体で、臭いの方も硫黄のような物が混ぜられているのか悪臭が漂う。
 
 思わず、顔を顰める小傘に対し、霖之助は薬液を指に掬うとそれを一舐めし、
 
「正直、余り美味しいとは言えない味だな。個人的にお勧めはしないよ」
 
 言って、再び指に一掬いして小傘の口元に差し出す。
 
 恐る恐るといった態度で、霖之助の指に付いた薬を舐めた小傘は、思わず目尻に涙を浮かべた。
 
 ハッキリ言って苦い。人間ならば毒物として扱われるような薬品も混入している為、それも仕方無いかもしれないが、彼女が妖怪だからこそ、辛うじて飲む事が出来るという代物だ。
 
 ……とはいえ、それでも1リットルも飲みたいとは思えないのも事実。
 
 考えあぐねる小傘を前に、霖之助は溜息を一つ吐き、
 
「こういうのはどうだろう? これの半分を先程と同じように尻から注入して、残りの半分を飲む。というのは」
 
 ……半分。
 
 それなら、何とか我慢出来るかもしれない。
 
 本当ならば、半分でも嫌な所だが、ようやく自分を認めてくれた霖之助を失望させたくない。――もう、捨てられたくない。
 
 との想いから、それを受ける覚悟を決めた。
 
「どうする……?」
 
 問い掛ける霖之助に対し、小傘はその白くて小振りなお尻を突き出すと、
 
「そ、それでお願い……」
 
「分かった」
 
 霖之助もそれを了承すると、今度は予め栓をする為のアナルプラグを用意して、
 
 ……まさか、これを使う日が来る事になるとはね。
 
 無縁塚には、この手の大人の玩具も偶に落ちている。
 
 魔理沙や悪戯好きな妖精達の教育によろしくないと思って、全て回収してきたのだが、実際に自分が使う事になるとは思いもしなかった。
 
 ……何が幸いするのか分からないなぁ。
 
 そんな事を考えながら、小傘の眼前で洗面器の中から薬液を吸い上げ、本日三度目となる浣腸器の先端を彼女の肛門に突き立てる。
 
「ひゃッ!?」
 
 覚悟はしていても、やはり慣れるものでもない。
 
 ……とはいえ、短い悲鳴の中に、若干艶が混じってきたような気がするのも気のせいだろうか?
 
 小傘の僅かな変化に気付かないまま、霖之助はゆっくりと浣腸器のピストンを押し込んでいく。
 
「あ、あぁ……ッ」
 
 口を大きく開け、息を吐き出しながら、必死に薬液を体内に取り込もうとする小傘。
 
 全てを注入し終えた霖之助は、手早く彼女の菊穴にゴム製のアナルプラグをあてがい、強引に押し込んだ。
 
「ヒィあ!?」
 
 予告無しに行われた為、驚きと苦痛そして快楽の入り交じった嬌声を挙げる小傘。
 
 とはいえ、一旦、栓が施された以上、薬液が漏れる心配は無い。
 
 一先ずの安堵の為、霖之助は荒い息を吐きながら小刻みに震わせる小傘の尻を軽く叩き、彼女の前に残った薬液の満たされた洗面器を差し出すと、
 
「さぁ、後はコレだけだ。頑張れ」
 
「は、はい……」
 
 返事を返し、ゆっくりと小傘は洗面器に顔を近づけていく。
 
 薬液自体の味が苦いというのもあるが、一度、尻から自分の体内に入れられ排泄された物という事の嫌悪感が高い。
 
 そんな物、本来であれば口を付けるどころか、早々に捨ててしまいたいが、ここでそんな事をすれば、霖之助に捨てられるかもしれない。……そんな想いから、恐る恐る薬液に口を付けた小傘は、啜るようにして飲み込んでいく。
 
 味わう事無く、嚥下したいというのが小傘の本音であるが、残念ながら粘度の高い液体の為、どうしても喉に絡む。
 
 その為、一々口に含む毎に飲み込んでいかなくてはならないので、どうしても時間がかさんでしまうし、最後の方に残った分に関しては吸い込む事も出来ず、舌で舐め取らなくてはならない。
 
 端から見れば犬のような恰好で、這いつくばって下痢便のような液体を舐め取っていく姿。
 
 哀れを通り越して、滑稽ですらある事を自覚しても、小傘は霖之助に捨てられたくない一心で、それを実行した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 やがて、全てを飲み終えた小傘は、恐る恐る霖之助に視線を送る。
 
 そこには、軽蔑されていないだろうか? という不安が隠し切れていない。
 
 だが霖之助は優しい手付きで彼女の頭を撫でてやると、
 
「良く頑張った……。それでこそ、僕の見込んだ付喪神だ」
 
「あ……」
 
 軽蔑されるどころか褒められてしまった事に、僅かな驚きを覚えるが、その手の感触は彼女が初めて得た感情であり、また抗いがたい欲求であった。
 
 ……気持ちいい。それに、……褒められるのって、嬉しいんだ。
 
 こんな感情が得られるのであれば、あの試練に耐えた事も満更では無いと思い始める小傘。
 
 そんな小傘に対し、霖之助は炉の近くに立て掛けてあった鉄棒を持って近づき、
 
「一応、今回の分はこれで終わりなんだが、仕上げとして、こんな物も用意してある」
 
 そう言って差し出したのは、逆文字で“香霖堂”と刻まれた鏝だ。
 
 恐らく、熱した炉にくべて充分に焼けた所で道具に押し当てる事で銘を刻む為の焼き鏝なのだろう。
 
「道具であり、付喪神であるとはいえ、君の身体は少女でもある。
 
 一生物の焼き印を刻むのは少々気が引けてね。どうするかは、君の判断に任せようと思う」
 
 確かに普通の少女ならば、そのような行為は絶対に断るだろう。
 
 だが、小傘にしてみれば、その焼き印は自分が霖之助の所有物である証でもあり、それを耐えきった後で、また先程のような甘美な思いが出来るというのであれば、それを受けるだけの覚悟がある。
 
「あ、あの……」
 
 僅かに躊躇い、口を開く。
 
「私を絶対に捨てないと約束してくれる……?」
 
 恐る恐る問い掛ける小傘に対し、霖之助は真摯な表情で、
 
「当然だろう。――君は僕の最高傑作にも成り得る道具だ。誰かに売ったり、況してや捨てたりなんかは絶対にしない」
 
 それこそ、小傘が長年に渡り求め続けてきた言葉だ。
 
「ありがとう……」
 
 一滴の涙を流し、礼を述べた小傘は、未だにアナルプラグによって栓をされたままの尻を突き上げると、
 
「こちらに……、後生ですから、出来るだけ目立たない所にお願い」
 
「分かった。少し、待っていてくれ」
 
 告げると、炉に火を入れ、鞴で空気を送り石炭を熱していく。
 
 5分程その作業を続けると石炭が灼熱し、10分も経つ頃には部屋の温度が上昇してきた。
 
 舌を噛まないように、と小傘の口に猿轡を噛まし、水で湿らせた手拭いで右の尻たぶの汚れや薬液を丹念に拭ってやる。
 
 準備が整ったのか、霖之助は炉から真っ赤に焼けた焼き鏝を取り出して小傘の背後に回り、
 
「じゃあ、やるよ」
 
 短く呟くと、小傘もシッカリと頷き返した。
 
 次の瞬間には、躊躇い無く焼き鏝を小傘の尻たぶに押し付ける。
 
「んグゥ――ッ!?」
 
 肉の焼ける臭いが霖之助の鼻を衝く。
 
 同時、余りの激痛に耐えられなかったのか、小傘の肛門を閉じていたアナルプラグが収縮で抜け、中に残っていた僅かな薬液が吹き出し、股間からは黄金色の小水も漏れ出した。
 
 そんな事態にも関わらず、霖之助は眉一つ動かさずに慎重に頃合いを見計らい、ゆっくりと焼き鏝を小傘の尻たぶから引き剥がしていく。
 
 激痛の為、既に小傘の意識は飛んでいるものの、偶に大きく痙攣を起こす為、事は慎重かつ手早く行わなければならない。
 
 そうでないと、彼女の肌に余計な傷を残す事になる。
 
 焼き印を施す以上、見栄えの良い綺麗な印を施す。――それが焼き印を承認した小傘に対する霖之助なりのせめてもの礼儀だった。
 
 やがて、焼き鏝を剥がし終えた霖之助は、その出来映えに満足そうな吐息を吐き出し、手にした焼き鏝を定位置に戻すと棚から火傷用の軟膏を取り出して、小傘の尻に塗ってやる。
 
 それから、彼女の拘束を解き、自分の上着を掛けてやると、一度、小傘の頭を撫でてやってから風呂を沸かす為に工房を後にした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 次に小傘が目を覚ました時、場所は工房ではなく湯船の中だった。
 
「おや、目が覚めたかい」
 
 掛けられた声は背後からで、霖之助は彼女に覆い被さるようにして服を着たまま湯船の中に浸かり、小傘の体表に残った薬液を拭い取っていた。
 
「霖之助さん……」
 
「あぁ、――随分と体力を消耗したようだからね。暫くは僕に任せると良い」
 
 確かに、彼の言う通り、腕を上げるのさえ億劫な程に体力を消耗している。
 
 霖之助の言葉に甘え、彼の身体に背中を預ける小傘。
 
「半年ほど、週に1回か2回くらいのペースで、これを繰り返せば、君はどんな弾幕であろうと跳ね返せる傘になるだろう。
 
 それまではキツイだろうが、頑張っていこう」
 
「は、半年……」
 
 このような苦痛を、後半年も繰り返すと聞かされた小傘が感じたのは、絶望ではなく期待にも似た疼きだった。
 
 湯船の中なので、分かり難いものの、彼女の秘処からはお湯とは違う液体が滲み出ている。
 
「はい――。私、頑張りますから……。霖之助さんも……」
 
 否、その呼び方は相応しくない。
 
「ご主人様も、自分のお好きなように、私の身体を弄ってください」
 
 所有者に喜ばれる事。
 
 それこそが、道具である彼女の至高の喜び。
 
「あぁ、僕としても色々と改造案はあるからね。――いずれ、君を幻想郷最高の傘に仕立て上げてみせよう」
 
 言って小傘の頭を撫でてやる。
 
「はい。期待してます……」
 
 その期待は、道具として主人の役に立てる事なのか。それともその過程における調教を思っての事なのか……、それは彼女だけが知っている。
  
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