香霖堂繁盛記
 
書いた人:U16
 
第100話(裏) 快楽と代償(番外編)
 
 幻想郷と呼ばれる閉鎖された世界がある。
 
 この世界とは見えない壁一枚を隔てた所にある異世界。
 
 そこでは、人間だけでなく妖精や幽霊、吸血鬼に妖怪、更には宇宙人や死神、閻魔様に神様までもが存在していた。
 
 その幻想郷の魔法の森と呼ばれる湿度の高い原生林の入り口に、ポツンと建てられた一件の道具屋。
 
 掲げられている看板には香霖堂の文字。
 
 店の中に入りきらないのか? 店の外にも様々な商品が乱雑に積み重ねられている。
 
 ここ香霖堂は、幻想郷で唯一、外の世界の道具も、妖怪の道具も、冥界の道具も、魔法の道具も扱っている店であるが、外の世界の道具に関しては誰にも使い方が分からないため余り売れていないらしい。
 
 というか、僅かに使用方法の分かった外の世界の道具は、全て店主である森近・霖之助が自分のコレクションに加えてしまうので、商売としては成り立っていない。
 
 まあ、そんな感じで、ここ香霖堂は今日ものんびりと適当に商売していた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 香霖堂の地下工房に湿った音が満ちる。
 
 音の原因は、部屋の中央にある作業台に腰掛けた店の主人、森近・霖之助。……そして、彼のペニスに奉仕する妖怪の少女、多々良・小傘だ。
 
 小傘は辿々しい舌使いで、霖之助のイチモツを舐めながら、作業台に置かれた砂時計へと視線を向ける。
 
「ん……」
 
 全ての砂が落ちきる迄、後一分を切っている。
 
 小傘が霖之助と交わした条件は、砂時計の砂が落ちきるよりも早く小傘が霖之助を絶頂に導けば彼女の勝ちとして褒美が貰え、出来なければお仕置きを受けるというものだ。
 
 これまで何度も挑んできてはみるものの、一度として達成された事は無い。
 
 その度に様々なお仕置きを小傘は受けて来た。
 
 三角木馬、鞭打ち、蝋燭責め、浣腸、スパンキング、緊縛、洗濯バサミ責めといった身体的苦痛を伴うようなものから、剃毛、放尿、排泄、隠語説明、官能小説音読などのような羞恥プレイまで様々なものをだ。
 
「んふ……、ちゅぶ」
 
 荒い息づかいで必死に奉仕する小傘だが、無情にもここでタイムアップ。
 
 時間切れと共に、霖之助は小傘の頭を押し返し、股間から彼女の頭を遠ざける。
 
「やれやれだ。……また今日も駄目だったようだね」
 
「ご、ごめん……」
 
 素直に謝罪する小傘だが、その瞳にはお仕置きに期待する輝きが宿っているように感じた霖之助は暫し思案する。
 
 ……さて、どうしたものか。
 
 もっと酷い事をしようと思えば幾らでも出来るし、複数のお仕置きを同時にこなさせるという案もあるが、
 
 ……どうもお仕置きに期待しているような所がある。このまま普通にお仕置きしたとしても、あの娘には余り効果は無いだろうな。
 
 お陰で霖之助は暫く欲求不満が続いている。
 
 小傘の調教を初めて以来、霖之助は一度も射精していない。
 
 絶頂を迎える時は、小傘を使って達するようにする。それが小傘をオナホールとして改造する上で、霖之助が自分に課した制約だ。
 
 だというのに小傘ときたら、一向に口淫の技術が上達する様子を見せない。それどころかわざと失敗し、お仕置きされる事を喜んでいる節がある。
 
 これでは小傘が快楽を得る為に、霖之助が利用されているようなものだ。
 
 ……ここらで一度、お互いの立場を明確にしておく必要があるな。
 
 とはいえ、マゾヒストとして開花しつつある小傘にお仕置きは逆効果だ。
 
 ……厄介な性癖だ。
 
 溜息を吐き立ち上がった霖之助は小傘に服を脱ぐように命じると、自分は店の倉庫に赴き戸棚から新たな道具を持って地下工房へと戻った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 地下に戻った霖之助の前には、貞操帯のみを身に着けた小傘が彼の帰りを待ち侘びていた。
 
 白い肌に朱が差しているのは、恥ずかしさだけではないだろう。
 
 霖之助は懐から貞操帯の鍵を取り出すと、小傘の股間を保護する……、否、常に彼女の秘処と肛門を刺激し続ける道具が仕込まれた貞操帯の封を解いてやる。
 
「ヒィン!?」
 
 肛門と秘処からアナルバイブとローターを取り出す際、小さく嬌声を挙げる小傘。
 
 既にお仕置きによって陰毛の剃られた彼女の秘処は、まるで幼子のような生まれたままの姿を霖之助の前に晒している。
 
 但し、愛蜜を溢れさせた秘処と拡張され閉じきる事のない肛門は、幼子のそれとは似ても似つかないが……。
 
「ふむ……」
 
「あん!?」
 
 指を差し込み、具合を確かめる霖之助。
 
 小傘が堪らず声を挙げるが、霖之助は一切気にしない。
 
 愛液の滴り具合、肛門の柔らかさを交互に確認した霖之助は指を引き抜き小傘の鼻先にそれを近づける。
 
「う……」
 
 指先に僅かにこびり付いた排泄物に躊躇いを見せつつも、舌を伸ばして自らの愛液と腸液で汚れた主人の指を丁寧に舐め取っていく。
 
「ん……、ちゅむ」
 
 この程度の行為はお仕置きの内にも入らない。この後行われるであろうお仕置きを想像して小傘の内股を愛液が垂れ落ちる。
 
 上から見下すように注がれる霖之助の視線は冷たいものだ。
 
 ――今、彼の目には小傘はどう映っているのだろうか?
 
 一人の少女として? ……いや、これは有り得ない。精々がおしぼりかウエットティッシュ程度だ。
 
 普通の少女ならば耐えられないような視線も、本来が道具である小傘ならば話は別になってくる。
 
 道具として人に使ってもらえる事。人に喜んでもらえる事こそが、本来小傘が求めた幸せなのだから。
 
 ゆっくりと霖之助の指を舌で押し出し、清掃の完了を知らせる。
 
 霖之助は小さく頷き、持って来た紙袋から革と金属で構成された下着を取り出すと、手ずから小傘の身体に着用させていく。
 
「どうだい? キツいとかは」
 
「ちょっとだけ」
 
 とはいえ、普通に生活する分には何の影響も無い程度だ。
 
 霖之助は下着と肌の間に指を差し込み、具合を確かめると満足げに頷き、小傘の背後に回り込んで下着が脱げないよう鍵を掛けた。
 
「え……? これは一体……」
 
「名称は貞操帯。用途は女性の貞操を守る。……だ。基本的な用途はね。
 
 応用的には身に着けた女性に自慰を禁止させる程度の道具だよ」
 
 胸の頂部と股間に金属プレートが打ち付けてあり、上から触った所で何の刺激も得られない。
 
 隙間から指を差し込もうにも、その隙間が無いよう先程調整された。
 
 何よりも、今まで付けていた貞操帯と違い、この貞操帯には肛門はおろか秘処を刺激してくれるような道具が仕込まれていない。
 
「これが今回のお仕置きだよ」
 
 人の良さそうな笑みの瞳に嗜虐的な光を宿しながら言う。
 
「まぁ、何時ものお仕置きに比べれば楽なものだろうけどね」
 
 貞操帯を外す条件は、何時もと同じ。
 
 砂時計の砂が落ちきる前に霖之助を射精させる事。
 
 ……なら、明日はちゃんとイッてもらわないと。
 
 今までのようにお仕置き目当てで手を抜くわけにはいかない。
 
 小傘は、明日が来るのを待ち遠しく思うが、実はそれ自体が霖之助の仕掛けた罠だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 一日目。
 
 手伝いの少女が帰るのを今か今かと待ち続ける小傘。
 
 日も暮れ、ようやく二人きりになれたものの、霖之助から一向に呼び出しが来ない。
 
 痺れを切らせた小傘が思い切って霖之助を誘ってみると、返ってきた答えは、「今日は気が乗らないので止めておこう」という素っ気無いものだった。
 
 主人がそう言うのならば逆らうわけにもいかず、悶々とした気持ちのまま小傘は部屋に戻った。
 
 二日目。
 
 のらりくらりと小傘の誘いを躱す霖之助に対し、名案を思い付いた小傘は早速それを実行に移す事にした。
 
 その案とは、トイレに行くので鍵を外してもらうというものだ。
 
 和ぎる神としての付喪神を目指すようになった小傘は、人間の恐怖心の代わりに普通の食事を求めるようになった。
 
 食べる物を食べれば排泄する。その為、トイレに行くのも当然の行いだ。
 
 本来ならば霖之助の手で無理矢理絶頂に導いてもらいたいところであるが、この際贅沢は言っていられない。
 
 火照る身体を収める為、用便の振りをしてトイレで自慰をしようと企む小傘。
 
「あのご主人様」
 
「ん?」
 
「か、厠に行きたいから、鍵外して欲しいんだけど……」
 
 それを聞いた霖之助は納得したと頷き、
 
「確かに家の中を汚されても困るしね」
 
 言って、小傘に外の世界の道具を手渡した。
 
「名称は大人用紙オムツ。用途は、老人介護用のオムツだね」
 
 そんな物を渡されても小傘としては使い方が分からないし、なにより本来の目的である自慰を行う事も出来ない。
 
 とはいえ、小傘の抗議など知った事ではない霖之助は面倒臭げに溜息を吐くと、小傘にスカートを脱がさせて仰向けに寝かせ、貞操帯の上に手ずから紙オムツを装着させてやった。
 
 それで霖之助は満足して部屋に戻っていったのだが、問題は残された小傘の方だ。
 
 オムツを着けられた為の妙な安心感からか、今まで余り意識していなかった便意を急に意識するようになってしまった。
 
 三日目。
 
 遂に霖之助を地下工房に誘い出す事に成功した。
 
 作業台に腰掛け、傍らに砂時計を置く霖之助。
 
 既に便意が限界間近の小傘は、真剣な表情で霖之助と相対した。
 
 固唾を飲んで霖之助の帯を緩めるとイチモツを取り出す。
 
 霖之助が砂時計を引っ繰り返すと同時、躊躇い無く男根に舌を這わせる。
 
 男根に唾液を塗すような感じで舐め続けていると、それまで柔らかかったイチモツが徐々に固くなり起立してくる。
 
 ある程度大きくなったイチモツを咥えようとした小傘だが、そこで霖之助の手によって強引に股間から顔を遠ざけさせられた。
 
 軽く混乱する小傘に対し、霖之助は手元の砂時計を見せ、
 
「時間切れだ。――今日はここまでのようだね」
 
 言って、早々にズボンを引き上げてしまう。
 
「そ、そんな!?」
 
 小傘の思っていたよりも大分早い。それもその筈、今回霖之助が使用した砂時計は通常の三分用ではなく、一分用の物だからだ。
 
 だが、小傘とてもう後が無いので、このまま引き下がるわけにもいかない。
 
「お、お願い! もう一度だけ、やらせて!?」
 
 霖之助に取り縋り懇願する小傘だが、すぐにこのやり方では駄目だと自覚し、一旦、霖之助から離れると床に跪いて手を添え深々と頭を下げ、
 
「お願いします。どうか、もう一度だけチャンスをください」
 
「……チャンスは一日一回だけだと言ってあった筈だが?」
 
「お願いします。もう一度だけ……。どうか、ご慈悲を」
 
 そんな小傘を見ていると、霖之助の中の嗜虐心が鎌首をもたげてくる。
 
 彼は口元に冷笑を浮かべると、
 
「理由を聞こうか?」
 
 まるで獲物を前に舌なめずりする獣のような声色で問い掛ける。
 
 対する小傘は羞恥の為、霖之助の顔を見ないよう頭を下げたまま、
 
「お……、お腹が痛くて。厠に行きたいから……」
 
「それなら、紙オムツを渡した筈だが?」
 
 言うと、小傘の肩が一瞬大きく震え、続いて下を向いたままで大きく首を振った。
 
 ……なるほど。お漏らしはしたくない。というわけか。
 
 となると、それこそお仕置きにはうってつけだろう。
 
「じゃあ、まずは今日の分のお仕置きからいこうか」
 
「そんな!? お願い、先に厠に……」
 
 言っている間に、また腹痛が襲ってきたのか、腹を押さえて蹲る小傘。
 
 霖之助は、そんな小傘の手を取ると、手早く後ろ手に縛り上げ、
 
「さて……、今日はどんなお仕置きにしようか」
 
 わざと時間を掛けて考える振りをし、小傘が腹痛で苦しむ様を見てを楽しみながら、彼女の身体を仰向けに押し倒し、
 
「ここを重点的に責めてみようか」
 
 服の上から身体の中心とも言うべきへこみ……、臍を突いた。
 
 小傘の身に着けたベストとブラウスのボタンを外してはだけさせ、臍を露出させる。
 
 そこに微細な振動を起こすローターを押し当て、
 
「ひぃ!? だ、駄目ぇ、止めてぇ!? い、いま……、そこ刺激しちゃ……、だ……、駄目ぇ!!」
 
 臍は子宮と繋がっている為、臍への刺激は小傘の女の部分にダイレクトに伝わる。
 
 そして、その刺激は排泄を我慢している小傘にとって非常に危ういものでもあった。
 
 当然、霖之助もその事には気付いているだろう。だが、そんな事は知った事ではない、と霖之助は小傘の臍に顔を近づけ、
 
「少し、汚れているようだね。――綺麗にしておこうか」
 
 言うなり、何処からともなく綿棒を取り出し、小傘の臍を掃除し始めた。
 
「だ、駄目ぇ! ホントに駄目なの! 後で……、後でなら、どれだけ弄っても良いから……、今だけは駄目ぇ。お願い、もう許して……、厠に行かせて……」
 
 目尻に涙を溜めながら懇願する小傘。
 
「も、もう……、だめ……」
 
 限界が訪れようとした瞬間、小傘の臍から綿棒が遠ざけられる。
 
 ……え?
 
 この場での排泄はしたくは無かったが、それとは別に待ちに待った絶頂の寸前で止められた事にキョトンとした表情で霖之助を見つめる小傘。
 
 対する霖之助は優しげな笑みを浮かべて小傘の頭を撫でてやり、
 
「よく我慢したね。さぁ、約束通りチャンスをあげよう」
 
 ズボンを降ろして、自身の男を露出させる。
 
 だが、既に肛門が熱く感じる程に限界間近の小傘からすれば、もはや霖之助を絶頂に導けるだけの時間的余裕など無い。それどころか、今貞操帯を解除してもらったとしても厠まで我慢出来るかすら危ういのだ。
 
 もっとも、それを言った所で霖之助が聞き入れてくれるとも思えないし、なにより最初から小傘には拒否権が無い。
 
 腹痛を耐えながら、震える舌先を霖之助のモノへと伸ばす。
 
「今回は特別に、時間制限は無しにしようか。口だけで僕をイカせる事が出来たら、貞操帯を外してあげよう」
 
 という霖之助の言葉も既に小傘には届いていない。
 
 心を閉ざし、一心に奉仕する事で少しでも崩壊を先延ばしにしようと試みる。
 
 ――が、もはや限界を超えている上に、拙い小傘の奉仕では霖之助をそうそう絶頂に導ける筈も無く、肛門の決壊が先に訪れた。
 
 革製の貞操帯と紙オムツのお陰で音は外に漏れていないし、排泄物そのものも外に零れてはいない。
 
 だが、貞操帯に押し潰され尻にまとわりつく生暖かく気持ち悪い糞便の感触が、小傘にお漏らしを実感させる。
 
 嫌悪感と惨めさがない交ぜになる中、追い打ちを掛けるように悪臭が小傘の身体から漂ってきた。
 
「い、いやぁ……」
 
 霖之助の股間から顔を離し、泣きじゃくる小傘。
 
 だが、霖之助はそれすら許さない。
 
 小傘の髪を掴んで強引に上を向かせると、己の男根を小傘の口に強引にねじ込んだ。
 
「僕は止めて良いと言ったつもりは無いが?」
 
「んぶぅ!?」
 
 小傘の頭を掴み、強引に前後させる。
 
「ングッ!? ンぶ!」
 
 呼吸すらままならない状況で口内を無理矢理犯される状況。
 
 これまで幾度も口で奉仕はしてきたが、基本的には舌で舐めるだけの作業であり、実の所、フェラチオすら未経験の小傘。
 
 何をどうすれば良いのかさえ分からない。
 
 呼吸困難で意識が遠のきかけた時、ようやく霖之助が口から男根を引き抜いてくれた。
 
「うぇ!? ――えげぇ」
 
 むせ返る小傘を冷めた視線で見下しながら、霖之助は彼女の呼吸が整うのを待ち、
 
「ハァ、ハァ……。ンぶッ!?」
 
 再度、小傘の口内を犯しに掛かる。
 
 霖之助は小傘の頭を前後させる運動を繰り返しながら、面倒臭そうに、
 
「少しは自分で工夫してみてはどうだい? このままだと、君は一生、僕をイカせる事は出来ないよ。
 
 ――それとも、一生その貞操帯を付けたままで、中に糞便を垂れ流す生活を送りたいのかい?」
 
「ンンぅ!?」
 
 それだけは断固お断りしたい。
 
 もう、こんな惨めな思いは二度としたく無いというのが小傘の本音だ。
 
 霖之助の助言に従い、強制的に前後させられる頭の動きに合わせて、舌を口内の陰茎に這わせてみたり、思い切り吸い付いてみたりと、試してみる。
 
 この様な状況にも関わらず、小傘が霖之助の陰茎を噛み千切ろうとせず、懸命に奉仕しようとするのは、偏に捨てられなく無いという恐怖からだ。
 
 初めて自分の事を必要としてくれる。認めてくれる人に出会えた。
 
 ……この人にだけは捨てられたくない。
 
 その想いが、小傘に霖之助への忠誠を誓わせる。
 
 ……もっとも半分程は、開花しつつある彼女のマゾヒズムからくる主人への忠誠の現れでもあるのだろうが。
 
 ともあれ、如何に忠誠心が高かろうと未だ技術の拙い小傘では、霖之助を満足させるには至らない。
 
 それでも多少は効果があったらしく、口の中を満たす陰茎が太さと強度を増してきたのを実感した。
 
 ……まぁ、多少はマシになったか。
 
 充分に勃起した男根を小傘の口から引き抜く。
 
「あ……」
 
 名残惜しそうな声を零し、小傘がそびえ立つ霖之助のイチモツを見つめる。
 
「さぁ、続きは君がやるんだ」
 
「は、はい……!」
 
 小傘としては自ら奉仕するフェラチオより、より強く自分を道具として認識出来るイラマチオの方が好みなのだが、主人の命令とあっては断るわけにはいかない。
 
「ん……、ちゅむ……」
 
 舌で亀頭の先端を刺激し、僅かに塩気のある液体を舐め取る。
 
 その後は、口に男根を頬張り頭を前後させる事によって射精を促そうとするが、技術力の足りない小傘の単調な奉仕ではなかなか霖之助を射精に導く事が出来ない。
 
 亀頭に吸い付いたり、甘噛みしてみたりと試行錯誤しながら奉仕する事三十分。
 
「まったく……」
 
 生殺しの状態にいい加減焦れてきた霖之助は、小傘の頭を掴むと再度イラマチオを再開させた。
 
「んぐぅ……ッ!? んんふぅ!?」
 
「一つ、教えておいてあげると、射精寸前の場合、技術よりも激しさや勢いの方が重要だ」
 
 言いながら、頭を前後させるペースを更に加速。
 
「クッ――、出すぞ。全部、飲むんだ」
 
 言って、いっそう深く突き入れ、小傘の喉の一番深い所に射精した。
 
「――んッ!?」
 
 喉奥を突かれた事と、初めて射精を受けた事。
 
「うげぇ!? ――えおぅ!」
 
 二重のショックにより、反射的に霖之助の股間から口を離しむせ返る小傘。
 
 喉に出された精液を吐き出し、思わず咳き込む。
 
 しかし、霖之助としては数ヶ月分溜まった射精を途中で止める事が出来ず、小傘の顔に、髪に、身体に、まるでマーキングするように白の飛沫を浴びせ掛けた。
 
 ……こ、これが、……男の人の精液。
 
 口に残る精液を舌の上で転がすようにして味わう。
 
 ……熱くて、苦くて、ネバネバして、臭くて。
 
 とてもではないが、好き好めるような物では無い。
 
 ……でも、
 
 全身を霖之助の精液で汚されるのは、まるで臭い付けされているようで、自分が霖之助の物であると知らしめていられるようで、
 
 ……ちょっと好きかも。
 
 ――しかし、小傘が悦に浸れたのもそこまでだった。
 
「……僕は、全部飲めと言った筈だが?」
 
「あ……」
 
 威圧的な物言いで言いながら、精液と唾液で汚れたイチモツを小傘の頬に押し付けてくる霖之助。
 
「まず、こちらから綺麗にしてもらおうか」
 
「は、はい……」
 
 霖之助の男根に舌を這わせ、丁寧に精液を舐め取っていく小傘。
 
 主人の命令に従い、亀頭に吸い付いて尿道の中に残っている精液まで吸い取る。
 
 最後に指でした時と同じように、舌で押し出し清掃の終わった事を知らせる。
 
 だが問題は口の中に残った精液だ。
 
 少量の物ならばともかく、舌の上に溜まる程度の量の精液を飲み下すのは、初心者である小傘にはまだ難しい。
 
 ……これ、喉に絡んで上手く飲み込めない。
 
 しかも、苦いので尚更だ。
 
 目尻に涙を浮かべながらも懸命に飲み下そうとする小傘。
 
「ん……」
 
 唾液と一緒にやっとの思いで口の中の精液を飲み干した小傘に対し、霖之助は床に飛び散った精液を指さし、
 
「まだ残っているだろう? それも舐め取るんだ」
 
「……え?」
 
 霖之助の出した命令は、射精した精液を全て飲めというもの。飲み込めず、吐き出したのは、全て小傘のミスだ。
 
 まるで、霖之助に屈服するように頭を床に擦るぐらい下げ、舌を伸ばして精液を舐めようとする小傘。
 
 霖之助は、小傘にそのまま続けるように命じると、自分は彼女の後ろに回り込み、服を捲り上げて背中にある貞操帯の鍵を外す。
 
 続いてスカートを剥ぎ取り、紙オムツを外すと一気に便臭がきつくなった。
 
「じ、自分でします! 自分でしますから!?」
 
 これまでに排便する姿は何度か見られてはいる。……だが、その事に慣れたわけではないし、自分の排泄物を見られて平気なわけでもない。
 
 貞操帯の隙間から押し出され、紙オムツにベッタリと付着した糞便は未だ小傘から排出された時の温度を保ったままだ。
 
 その鮮度に比例する形で、臭いの方もキツイ。
 
 漂ってくる悪臭が、小傘の心を惨めにさせる。
 
 せめて自分の手で処理出来ればと思うが、霖之助はそれさえも許さない。
 
 必死に懇願する小傘を無視して貞操帯も外し、糞便塗れとなったそれを小傘の眼前に放り投げた。
 
「ヒっ!?」
 
 飛び散った糞便が付着しないよう、慌てて身体を仰け反らせる小傘。
 
「自分が放り出した物だ。そこまで嫌わなくても良いだろう」
 
 そうは言うが、排泄物に嫌悪感を示さない者も居ないだろう。
 
 眼前に投げ出された排泄物塗れの貞操帯と紙オムツを前に戸惑う小傘に対し、霖之助は排泄物で汚れた小傘の尻を眺めながら、
 
「調教も進んだ事だし、そろそろ挿入しても良い頃合いだと思ったんだが……」
 
 僅かに考え、
 
「そうか……、君の身体の中は汚いのか。そういう事なら仕方無いな。――今後一切、手出しはしないでおこう」
 
 言って、イチモツをズボンの中に仕舞い始める。
 
 本当に、小傘が無理矢理調教されてきたのならば、歓喜するような台詞だっただろう。
 
 しかし、既にマゾヒストとして開花しつつあり、更にはここ数日お預けをくっていた小傘にとって、それだけは絶対に阻止しなければならない事であった。
 
「き、汚くない! 全然、汚くなんかないから! ――どうか、私に挿入れて……、ください」
 
 言って、膝を立て尻を突き出す。
 
 本当なら、両手で秘処を割り開きたい所だが、未だ後ろ手に縛られていてそれはかなわない。
 
 だが、霖之助は小傘の誘いには応じず、
 
「なら、汚くないという事を証明してみせてくれないか?」
 
「証明……?」
 
 どうすれば良いのか分からず戸惑う小傘に対し、霖之助は糞便にまみれた貞操帯と紙オムツを指さし、
 
「汚くないのなら、舐める事くらいは余裕で出来る筈だろう」
 
 言われ、改めて視線を汚物塗れの貞操帯に移す。
 
 ……アレを、……舐める?
 
 正気の沙汰とは思えない行為だ。
 
 今日に至るまで、様々な調教を受け、そしてその全てを受け入れてきた小傘だが、流石に自分の排泄物を直接舐めるという行為には、背徳感や嫌悪感どころではない禁忌に近い感情がある。
 
 ……だが、それをやらなければ、また貞操帯によって絶頂を封じられるかもしれない。いや、霖之助の事だ、それ以上の行為を強要してくるかもしれない。
 
 ……だ、大丈夫。ご主人様の指に付いた物なら舐められたから。
 
 上体を屈め、鼻先を糞便に近づけ舌先を伸ばす。
 
 嫌でも鼻腔を付く悪臭に、敗北感と惨めさが綯い交ぜになり、我知らず涙を零した。
 
 震える舌先が、糞便までの距離を1p、また1pと縮めていき……、
 
 ……い、
 
「嫌ぁ!?」
 
 触れる寸前、叫びを挙げながら小傘は身体を起こした。
 
「む、無理……。無理です。他の事なら何でもします! だから、これだけは許してください!!」
 
 霖之助の足下に縋り付き、涙ながらに哀願する小傘。
 
 ……まぁ、こんな所だろう。
 
 霖之助が小傘に与えたかった感情は禁忌。
 
 あらゆるお仕置きを受け入れ、マゾヒストとして完成されつつある小傘にとって既に罰は罰として用を為さない。
 
 既に彼女にとっての罰とは、絶頂を与えてくれるご褒美のようなものなのだ。
 
 それでは、今後も調教していく上で、お仕置き欲しさにわざと失敗を繰り返しかねない。
 
 だから、嫌悪感、恐怖、苦痛、恥辱。あらゆる感情を上回るような絶対的な禁忌を彼女に植え付ける必要があった。
 
 どうやら、それには成功したようだが、安堵するにはまだ早い。
 
 ……彼女には、まだ教えなければならない事がある。
 
 その為にも、精神的に弱っている今がチャンスだ。
 
「今の言葉に、嘘偽りは無いね?」
 
「は、……はい。はい!」
 
 霖之助は立ち上がると、壁に掛けられた荒縄を手に取り、
 
「なら、これから君には代わりの罰を与える。――但し、今度はどれだけ泣こうが許さないから、そのつもりでいてくれ」
 
 そう宣言する霖之助に対し、小傘は震えながらも懸命に頷き返した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ん……、クッ……」
 
 小傘は全裸に剥かれた上で、見るからに頑丈そうな木製の椅子に天地逆さまに荒縄で縛り付けられていた。
 
 両腕は後ろ手に、足はM字に開脚した上で閉じられないように棒に縛られ固定されている。
 
 眼前に立たれるだけで、秘処と肛門が丸見えになるような恰好だ。
 
 確かにこの恰好は恥ずかしいが、この程度の羞恥ならば既に慣れている。
 
 いや、むしろ見られる事で羞恥を感じ、それを快感へと変換出来る程には小傘の調教は進んでいる。
 
「見られて感じているのか? それとも縛られて感じているのか?」
 
「ヒィあ!?」
 
 言って、霖之助が小傘の秘処を撫でると、それだけで小傘は艶のある悲鳴を挙げ、秘処からは愛蜜を滴らせた。
 
 愛液が腹を伝い、臍の辺りまで垂れてくるも、身動き一つ出来ない小傘にはどうする事も出来ない。
 
「さて……、そろそろお仕置きを始めようか」
 
 霖之助が取り出したのは、銀色の輝きを放つ金属製の嘴だ。
 
「これが何か分かるかい?」
 
 問うと小傘は辛うじて動く首を左右に振った。
 
 この状況で、こんな物を何に使うか分からなくても無理は無い。
 
「名称は膣鏡。用途は膣または子宮用の医療用具……なんだが、今回は別の使い方をする」
 
 言って膣鏡にローションを塗り滑りを良くすると、それを小傘の肛門に添える。
 
 今回、霖之助が使用したのは一番小さいサイズの膣鏡で、肛門に使用するというのも間違った使い方ではない。
 
「ヒッ……、ぎぃ!?」
 
「無理に我慢せず、息を吐いて力を抜くんだ……」
 
 そう言われても、初めてで出来る筈が無い。
 
 ……もっとも、出来ようが出来まいが、膣鏡を根本まで押し入れられる事に代わりは無いのだが。
 
「ほら……、もう少しだ」
 
 ゆっくりと挿入された膣鏡は、遂に小傘の尻穴を限界まで押し広げて根本まで彼女の直腸にその身を埋めさせた。
 
 だが、膣鏡の使い方はこれで終わりではない。
 
 膣鏡の尻に付いているネジを回していくと嘴がゆっくりと開き、小傘の腸内を白日の元に晒した。
 
 目には映らなくても、押し広げられた肛門の感覚と外気に触れる腸の感じでおおよその状態を理解しているのであろう小傘が不安げな眼差しを霖之助に向けてくる。
 
 そして彼の手にした物を見て、顔色を青ざめさせた。
 
「そ、それをどうするの……?」
 
 それ。……すなわち、先程脱がされたばかりの糞便塗れの貞操帯と紙オムツ。
 
 もう片方の手にスプーンを持った霖之助は、それでオムツに付着した糞便を掬い取ると、膣鏡で大きく開かれた小傘の直腸に戻し始めた。
 
「い……、イヤァ――ッ!?」
 
 一度放り出した汚物を腸内に戻される。
 
 想像を絶する嫌悪感に悲鳴を挙げ、身を捻って何とか逃れようとする小傘。
 
 しかし、どれだけ暴れようとも、彼女の身体を拘束する荒縄は弛まる気配を微塵も見せない。
 
「いやぁ――!! 止めて! お願い止めてェ!!」
 
 とはいえ、流石に小傘の悲鳴が五月蠅いのか、霖之助は不機嫌そうな表情で、手にした汚物塗れのスプーンを小傘の眼前に突き付けると、
 
「余り騒ぐようなら、このスプーンを口に突っ込む事になるが……、どうする?」
 
 凄んだわけではない。あくまでも作業の一端として淡々と口にする霖之助。
 
 否、作業だからこそ何の躊躇いも無く彼なら実行するだろうと理解した小傘は、目尻に涙を溜め、恐怖で歯を鳴らしながらも懸命に頷いた。
 
「そもそも、元々は自分の中にあった物だろう。それを戻されただけの事で、そんなに取り乱す事も無いと思うんだが……」
 
 勿論、自分がやれと言われれば、即答で断るが。
 
 やがて、全ての汚物を小傘の中に戻した霖之助は小さく頷き、
 
「……少し、もよおしてきたな」
 
 独り言のように呟き、ズボンを降ろしてイチモツを露出させる。
 
 ……僅かな間。
 
 やがて小さな震えと同時、霖之助の男根の先端から黄金色の液体が放出される。
 
 狙いは、膣鏡によって開かれた小傘の肛門。
 
「ヒィ!?」
 
 生暖かい液体が流し込まれる感覚に、小さな安堵を感じながらも、それが霖之助の小水である事を理解した途端、汚物が混ぜ合わされ体内に侵入してくる嫌悪感に心が支配されていく。
 
「ゃぁ……、ィャぁ……」
 
 叫ぶ事の許されない小傘は、うわ言のように嘆きの言葉を涙と共に零すのみ。
 
 その小傘の様子を見て、満足げに頷く霖之助。
 
 今回、彼女に教え込みたかったもう一つの事がこれだ。
 
 主人の命令に逆らった場合、どれだけ泣き叫び懇願しようと罰を受けるという事実。
 
 これだけの事をされればトラウマとなり、今後は絶対に主人に逆らおうとはしないだろう。
 
「ごめんなさい……、ごめんなさい……、ごめんなさい……、ごめんなさい……」
 
 薄暗い地下室に聞こえてくる小傘の謝罪の言葉。
 
 とはいえ、すぐに許してはお仕置きの意味が無い。
 
 ……まぁ、一日放置といった所かな?
 
 霖之助は、小傘の尻穴から膣鏡を抜くと、代わりにディルド型のバイブレーターを取り出し、それを小傘のアナルに挿入する。
 
「ヒギぃ!?」
 
 アナル用ではない、普通サイズの張形であったにも関わらず、根本まで飲み込んだ小傘の菊門は、既に性器として完成されていると言っても過言では無いだろう。
 
 そのままバイブレーターのスイッチをONにすると、小傘が短い艶混じりの悲鳴を挙げて一度大きく跳ねた。
 
「あ……、あぎッ!?」
 
 霖之助はコードで繋がったリモコンを小傘の太股に巻かれている荒縄に差し込み、
 
「次に見に来る時まで、このバイブレーターを咥えたままでいるんだ。
 
 ……もし、それが出来ていなかった場合、もっと酷い罰を与える。――良いね?」
 
「そ、そんな!? お願い……、許して! こ、この縄を解いて、厠に行かせて……!?」
 
 霖之助が小傘に求める返事は一つだけだ。そんな言葉に耳を貸してやる必要は無い。とばかりに踵を返し、地下工房を後にする。
 
「お願い! お願いしますッ!! もう二度と逆らいませんから! 何でも言う事聞きますから! だから許してください!」
 
 小傘の哀願は聞き入れられる事なく、無情にも扉は閉じられた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 後日。霖之助が再び地下工房を訪れた時には、自らの糞尿に塗れ放心状態の小傘の傍らで、バイブレーターだけが動き続けており、小傘は宣言通り、更なるお仕置きを受ける事になった。
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